いぎたなし【寝汚し】 形容詞(ク活用)

ぐっすり

意味

(1)ぐっすりと寝ている・眠り込んでいる

(2)寝坊だ

ポイント

「い」は、「眠ること」を意味する名詞で、漢字で書くとです。

名詞の「」は、単独で使用されることはなく、「安寝(やすい)」「熟寝(うまい)」という熟語になったり、下二段動詞の「」とセットになって、「ず(眠らない)」「られず(眠れない)」といったように、慣用句の一部として使用されたりします。

「眠ること」が「汚い」か……

「ねぞうが悪い」という意味だろうな。

もしかするとそのニュアンスも含んでいるのかもしれませんが、普通に訳す場合には、「眠り込んでいる」という訳になります。

「眠り込んでいる」ことが「汚い」のか!

この場合の「汚し」は、「不潔だ」という意味合いではなく、「正しくない」という感じですね。

「起きるべきタイミングでまだ寝ている」というイメージです。

ああ~。

おねぼうさんということなんだな。

はい。

「寝坊している」という訳し方をすることもあります。

いずれにしても「いぎたなし」は、ほめられる行為ではないことをおさえておきましょう。

対義語と言えるのは「寝聡し(いざとし)」です。こちらは「目が覚めやすい」などと訳します。

ぱっと起きられることが「かしこいこと」とされたんだな。

そうでしょうね。

例文

空寝をしたるに、我がもとにある者どもの、起こしに寄り来て、いぎたなしと思ひ顔に、引き揺るがしたる、いと憎し。(枕草子)

(訳)寝たふりをしているのに、自分のもとに(はたらいて)いる者たちが、起こしに寄って来て、眠り込んでいると思っている顔で、引っ張って揺さぶるのは、たいそうにくらしい。