なほざりなり【等閑なり】 形容動詞(ナリ活用)

特に気にせずほったらかし

意味

(1)いいかげんだ・本気でない・おろそかだ・気に留めない

(2)ほどほどだ・あっさりしている

ポイント

「直(なほ)」「去り(さり)」の複合語といわれています。すると、「何もせず離れる」ことだといえるので、「いいかげん」という意味になります。

「注意をはらわない」という意味の漢語である等閑とうかんを訓じる際には、「なほざり」と読みました。

なほあり」が音変化したという説もありますが、その場合でも「依然としてそのままある」ということになりますから、「いいかげん」という意味につながっていきますね。

「おざなり」って言葉もあるよね。

御座成おざなり」ということばで、江戸時代末期くらいから使われていたようですね。

「お座敷での対応のように形式的に取り繕った態度」とか、「座ったまま事を成す」とか、起源については諸説ありますが、意味的には「いいかげんに対応すること」を意味しますね。

じゃあ、「なほざり」も「おざなり」も、結局は「いいかげん」っていう意味なんだね。

どちらも「本気ではない」ということにはなりますが、根本的にはちょっと違います。

「なほざり」は、「直(何もせず)+去(離れる)」ということなので、「そのままほったらかしにする」というニュアンスです。

一方、「おざなり」は、「お座敷対応(あるいは座ったまま成す)」ということなので、「それなりに対応する」というニュアンスです。

ふむふむ。

ただ、前述したように「おざなり」のほうは、江戸時代末期に見え始める言葉なので、「古文の試験」で出てくることはないと考えて大丈夫です。

古文としては等閑なほざりなり」という形容動詞を覚えておきましょう。

例文

なほざりに 折りつるものを 梅の花 濃き香に我や 衣染めてむ (後撰和歌集)

(訳)特に気に留めずに折り取ったのに、梅の花の濃い香に、私は着物を染めてしまおうか。

よき人は、ひとへに好けるさまにも見えず、興ずるさまもなほざりなり。(徒然草)

(訳)教養のある人は、ひたすらに情趣を好む様子にも見えず、面白がる様子もあっさりしている【ほどほどである】