あさまし 形容詞(シク活用)

意味

① 驚きあきれるほどだ・意外だ

② 情けない・興ざめだ

ポイント

「驚きあきれる」という意味の「あさむ」という動詞が形容詞化したものです。

「浅む」は、「思っていたほどの深さがない」という「ズレ」を意味しているんですね。「常識」とか「社会規範」に照らし合わせて、その深みに到達していない「軽薄さ」「思慮の浅さ」「趣きの浅さ」に驚きあきれているということです。

ただし、形容詞「あさまし」は、「浅い!」という批判的意味よりも、常態との「ズレ」に対する「予想外だ!」「びっくりした!」という驚きのほうがメインなので、「驚きあきれるほど」と訳しておけばだいたい大丈夫です。

ああ~。

たしかに、「驚きあきれるほど美しい」なんていうふうに、ほめている文脈で使うこともあるもんな。

「あさまし」の中心的意味は、「普通の状態とのズレが想像以上にすごい!」というニュアンスなので、「良い話題」「悪い話題」にかかわらず使用されます。

美しい人に対して、驚きあきれるほど目を見張ったり、とてもすばらしい歌に対して、驚きあきれたりするので、「あさまし」がプラス・マイナスどちらの話題で使用されているのか注意深く読む必要がありますね。

ただ、どちらかというと悪い意味で使用することのほうが多くて、「情けない」「興ざめだ」「ひどい」などと訳すこともあります。時代が下るにつれてその傾向が強まっていき、現代では悪いほうの話題でしか使用されなくなりました。

例文

まことに蓬莱の木かとこそ思ひつれ。かくあさましき虚言にてありければ、はやとく返したまへ。(竹取物語)

(訳)ほんとうに蓬莱の木かと思った。このように驚きあきれるほどの嘘であったので、早くすぐにお返しになれ。

もののあはれも知らずなりゆくなん、あさましき。(徒然草)

(訳)ものの情趣もわからなくなっていくのは、情けないことだ。

(幼少の源氏を見て・・・)ものの心知りたまふ人は、「かかる人も、世に出でおはするものなりけり」と、あさましきまで、目を驚かしたまふ。

(訳)物事の道理をわきまえている人は、「このような(美しい)人も、世に生まれ出ていらっしゃるものだったのだなあ」と、驚きあきれるほど、目を見張っていらっしゃる。

(小式部内侍のすばらしい歌を聞いて・・・)思はずにあさましくて、「こはいかに。かかるやうやはある」とばかり言ひて、返歌にも及ばず、

(訳)意外で驚きあきれて、「これはどうしたことだ。このようなことがあるか、いや、あるはずがない」とだけ言って、返歌もできず、

例文の後ろ2つは、「普通に考えるよりもずっとすばらしい」ことに対して「驚きあきれるほどだ」と形容しています。

このように、「あさまし」があるときは、「普通よりもずっと良いこと」か、「普通よりもずっと悪いこと」か、そのどちらかが起きているので、プラス・マイナスのどちらなのかを考えましょう。

「悪い」ほうの話題であれば、「情けない」「興ざめだ」「ひどい」などと訳したほうがいいこともあります。

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