今日は「名詞」について考えましょう。
やってやるぜ。
どんとこい。
名詞=体言
「名詞」はその名のとおり、「ものの名称」を表す品詞です。
別名「体言」です。
「名詞」の定義
◆ものの名称を表す。 *「さだめ」など「物体ではないものの名称」にも用いる。
◆自立語である。
◆活用しない。
◆「体言」という。
「名詞」のはたらきや特徴は次のとおりです。
名詞のはたらき
①「主語の文節」になることができる。
②「を」「に」などを付けて「修飾語の文節」になることができる。
③ 断定の助動詞「なり」などを付けて「述語の文節」になることができる。
④呼びかけに用いて「独立語の文節」になることができる。
このように、名詞は、助詞や助動詞などをつけると、文構造のあらゆるところに存在することができます。
ただし、特に大切なのは、「主語になることができる」というところです。
主語の文節を構成できるのは、すべての品詞のなかで「名詞」だけです。
古文の場合、「大納言、〜」「弁慶、〜」というように、現代語であれば「が」「は」が入るところに何も書かれないことも多いです。そのため、現代語訳においては、主語のあとに「が」「は」などを補って訳しましょう。
名詞の種類
では、「名詞」をいくつかの種類に分けていきましょう。
「名詞」は主に次のように分類できます。
普通名詞と固有名詞
まずは「普通名詞」と「固有名詞」を見分けていきましょう。
何かひらめいた名詞を言ってください。
国
「国」は一般的な名詞なので、「普通名詞」です。
出雲国
特定の名前になりますので、「出雲国」は「固有名詞」です。
武士
「普通名詞」です。
平清盛
「固有名詞」です。
「普通名詞」の内側に「固有名詞」がたくさんある感じかな。
そのとおりです。
次のようなイメージですね。
〈普通名詞〉 国
〈固有名詞〉 遠江 近江 伊豆 相模 武蔵 下総 駿河
〈普通名詞〉 東国武士
〈固有名詞〉 熊谷直実 畠山重親 和田義盛 三浦義澄
「東国武士」はたくさんいますが、「熊谷直実」はそのうちの一人です。
このように、「普通名詞」は「ある特定のもの」の名称ではありません。
一方、「固有名詞」は「ある特定のもの」の名称です。
ふむふむ。
現代語でも何か出してくれ。
いいでしょう。
〈普通名詞〉 アイス
〈固有名詞〉 雪見だいふく パピコ パナップ アイスの実 ガリガリ君 しろくま ホームランバー あずきバー
〈普通名詞〉 炭酸飲料
〈固有名詞〉 コーラ ペプシ ファンタ ドクターペッパー メローイエロー タブクリア マウンテンデュー 三ツ矢サイダー カルピスソーダ オランジーナ
〈普通名詞〉 野球漫画
〈固有名詞〉 ドカベン タッチ ナイン H2 プレイボール キャプテン あぶさん メジャー ドラベース MIX ああ青春の甲子園 おれはキャプテン グラゼニ クロスゲーム 逆境ナイン すすめパイレーツ ラストイニング わたるがぴゅん! ショー☆バン 球場三食 巨人の星 ストッパー毒島 ロクダイ ジャストミート ふぁうるちっぷ
野球漫画のところが異様に熱いな。
記憶しているかぎり列挙していったら止まらなくなりましたよ。
「作品名」「商品名」は固有名詞
「パピコ」って固有名詞なんだ。
「パピコ」は商品名ですね。
商品名は基本的に「固有名詞」だと考えてください。
「雪見だいふく」も「パピコ」も「唯一のもの」ではないけど・・・、「普通名詞」ではなくて「固有名詞」なんだな。
商品を開発して名前を付けた時点では「唯一のもの」だったと考えればいいでしょうね。
大量のクローンが出回っていると考えればいいんだな。
そうです。
先ほどの野球漫画の例で言っても、『タッチ』はあだち充先生がお書きになった時点では「ひとつ」ですよね。
大量に印刷して大量に販売されても、「違う作品」になるわけではないので、同じ名前で呼びます。
「雪見だいふく」が大量に製造されても、「違う商品」になるわけではないから、同じ名前で呼ぶということなのだな。
物体としては100個あっても、商品としては「唯一のもの」であるということか。
そのとおりです。
「普通名詞」というものは、続々と簡単に生まれるものではありません。
たとえば「家」とか「雨」といった「普通名詞」で考えてみましょう。
「家」とか「雨」ということばは、長い時間をかけてみんなが使用して、いつのまにか定着したものです。そういうものが「普通名詞」です。
一方、「商品名」というものは、「商品開発者」が「メローイエロー」などと「名づける」わけですよね。「メローイエロー」が大量生産されて、世の中にたくさん存在するとしても、「メローイエロー」という名前は、他の似たような商品と区別するためにわざわざ固有に付けた名前であるので、「固有名詞」です。
なるほど。
「普通名詞はそう簡単に生まれない」
「固有名詞はわりとすぐにできる」
と区別できそうだな。
自分の消しゴムに「消しカス出る之介」とか「ノート破るエモン」とか「試験中に落っことすとどこいったかわからなくなる次郎」などと特有の名前をつければ、「固有名詞」のできあがりですからね。「固有名詞」は一瞬で生成されます。
「商品名・作品名は固有名詞」
覚えたぞ!
ただ、もともとは「商品名」「作品名」といったものでも、同じようなものを広く全般的に称するほどの力をもったものは、「普通名詞化」していると言えますね。
「ホッチキス」とか「シャープペン」とか、そういうものですね。
話がややこしくなってきましたので、そろそろ古文にもどりましょう。
数詞
「数詞」を見ていきましょう。
数量や順序を意味する数字が入っている名詞が「数詞」です。
では、「数詞」を挙げてみましょう。
一年
九尺
数千騎
いいですね。ぜんぶ「数詞」です。
北島三郎
人の名前なので、「数詞」ではなく「固有名詞」です。
イチロー
人の名前なので、「数詞」ではなく「固有名詞」です。
四日市市
市の名前なので、「数詞」ではなく「固有名詞」です。
もともと名づけたときには「個数」とか「順番」を意味していた場合でも、「名前」になっていればそれは「数詞」ではありません。
形式名詞
「形式名詞」を見ていきます。
「形式名詞」というものは、連体修飾語をともなう「とき」「こと」「もの」などです。
例文で確認しましょう。
「とき」「こと」「もの」を文の途中に入れて作文してください。
すさまじきもの
すずろなる目を見ること
遊びなれつるところ
いい例文です。
「すさまじき」「すずろなる目を見る」「遊びなれつる」といった「修飾部」があることによって、はじめて「どんなもの」なのか、「どんなこと」なのか、「どんなところ」なのか、ということがはっきりしてきました。
このように、直前に修飾部がある「もの」「こと」「ところ」などは、その修飾語を失うと、なんだかわからなくなってしまうのです。
ということは、直前に修飾語がある「もの」「こと」「ところ」などは、「もの」「こと」「ところ」といった語そのものが意味をもっていることにならないので、「かたちだけの名詞である」ということになるんですね。
腹すきけるとき、にんじんかじる。
そうそう、そういうものです。
直前の「おなかがすいた」がないと、どんな「とき」かわかりません。
このように、直前の連体修飾語とセットになることで、はじめてどんなものかがわかる名詞を「形式名詞」といいます。
形式名詞には、「こと」「もの」「とき」「ほど」「ところ」「ため」などがあります。
現代語では、形式名詞は通常ひらがなで書きますが、古文の場合は漢字で書いてあることも多いですね。
代名詞
名詞の種類の最後として「代名詞」を確認しましょう。
こは何ぞ。
の「こ」とかだな。
そのとおりです。
「あ」「こ」「そ」「た」「な」など、何かを指している語のうち、「主語になることができるかたち」のものは「代名詞」です。
人を指すものは「人称代名詞(人代名詞)」といい、「物・場所・方向」を示すものは「指示代名詞」といいます。ただ、「指示代名詞」がそのまま「人称代名詞」として使われている場合もかなりありますね。
名詞の構成
ほとんどの名詞は初めから一語の名詞ですが、「他の品詞から転じてできた名詞」や「2つの名詞がくっついてできた名詞」なども存在します。
転成名詞
複合名詞
接頭語(接頭辞)のついた名詞
接尾語(接尾辞)のついた名詞
です。
転成名詞というのは、
動詞「ちぎる」が名詞になった「ちぎり」とかだな。
そうです。
「動き」は「動く」という動詞が名詞化したものです。
「楽しみ」は「楽しい」という形容詞が名詞化したものです。
転成名詞と言いますね。
「複合名詞」は見当がつく。
「東国武士」とか「青馬」とか「金剛力士像」とかだな。
そうです。
もともと別の名詞が、分かちがたく結びついて一語化しているケースですね。
接頭語・接尾語とは・・・?
語句の上におまけみたいにくっついているのが「接頭語」です。
御時
さ夜
みぐし
わ党
あ子
「御」は、敬意を込める意味がありますし、「さ(小さい)」「み(美しい)」「わ・あ(私)」という意味がちゃんとあるのですが、これらの語は、単独では用いられず、他のことばの「前」につくことで存在できます。そういうものを「接頭語」と言いますね。
これらは、単独では「語」として機能していませんので、「接頭辞」と呼ぶこともあります。
一方、語句の下におまけみたいにくっついているのが「接尾語」です。
殿ばら
おのれら
ぬしども
などです。
接頭語と同様に、「ばら」「ら」「ども」などは、単独では「語」として機能していません。そのため、「接尾辞」と呼ぶこともあります。
現代語でいうと、「○○くん」とか「○○さん」とか「○○様」なんかも「接尾語(接尾辞)」なんだろうね。
じゃあ、
おぼっちゃま
って接頭語も接尾語もついているんだな。
すごいな。接頭語と接尾語のほうが、本体である「坊」よりも字数を使っているぞ。
おみおつけ
御御御付
なんていう名詞もありますからね。文字の4分の3が接頭語です。
いろいろな「名詞の種類」や「名詞の構成」があるんだな。
「芋焼酎」なんていうのは、名詞の種類としては「普通名詞」で、名詞の構成としては「複合名詞」ということか。
そうです。
アイスの「ガリガリ君」は、名詞の種類としては「固有名詞」で、名詞の構成としては「接尾語が付いた名詞」ということか。
そうです。
いやー、今日はほとんど脱線せずに受講することができたぞ。
試験前だからな。
「試験前」は、名詞の種類は「普通名詞」で、名詞の構成は「複合名詞」です。
これは終わらないぞ。
「これ」は「代名詞」です。
何か言うたびに名詞の説明をしてくる。
「言うたび」の「たび」は「形式名詞」です。
どうにかして終わらせなければ・・・
・・・・・・
?
?
(名詞がなかったんだ!)
(このまま無言で終わらそう!)
(くやしい)