なでふ 連体詞・副詞

なんちゅう・・・

意味

連体詞

(1)何という・どういう・どのような・いかなる

(2)どれほどの・特にこれという 

副詞

(1)どうして・なんで 

ポイント

「なにといふ」が圧縮されて「なにてふ」→「なんでふ」と言うようになりました。「なでふ」と書きますが、「ん」表記が登場してからは「なんでふ」とも書きます。

もともとの「何といふ」という表現をおさえておけば、「なにという」「どういう」という訳し方に結び付くと思います。

現代語でいう、

この料理なんちゅう名前なの?
    (何ていう)

なんちゅうこっちゃ!
(何ということだ!)

とかの言い回しに似ているね。

似ていますね。

似ているというよりまさにそういうことですね。

なでふ〇〇~」という表現は、「何という〇〇~?」「どういう〇〇~?」って質問する感じなんだね。

そうです。

たまに、「何ということを言うのだ!」というように、おどろいたりする文脈で用いられることもあります。

これを「なでふ」のみで発語することもあります。「なんという・・・」「どうして・・・」といった意味であり、この場合は感動詞に近い用法になりますね。

ああ~。

現代語でも、「なんちゅう・・・」といったら、「何という・・・」「どうして・・・」といった使い方になるもんね。

あとは、

打ち消し表現を伴い、

なにほどの〇〇でもない

と訳したり、

反語表現の文脈で使用されて、

どれほどの〇〇か、いや、どれほどのものでもない

と訳したりすることもあります。

要するに、「とるに足らない〇〇」という意味合いですね。

それが(2)の意味です。

ああ~。

「なんぼのもんじゃ!」的な使い方だね。

「番長がなんぼのもんじゃい!」だったら、「番長なんてたいしたことねえぞ」って意味だもんね。

そういうことですね。

さて、以上のようにもともとは後ろに体言をともなって連体詞として用いるのですが、やがて「用言」に係っていくような表現も出てきます。

その場合は「副詞」とみなして、「どうして」「なんで」と訳しておきましょう。

例文

こは、なでふことをのたまふぞ。(竹取物語)

(訳)これは、なんということをおっしゃるのだ。

なんでふ心地すれば、かく物を思ひたるさまにて月を見給ふぞ。(竹取物語)

(訳)どういう気持ちがするから、このように物を思っている様子で月をごらんになるのか。

ただきよき衣を着て詣でむに、なでふことかあらむ。必ず、よも、あやしうて詣でよと、御嶽さらにのたまはじ。(枕草子)

(訳)(御嶽詣でに)ただ浄衣を着て参詣するとして、どれほどのこと【さしさわり】があろうか、いや、どれほどのこともない。まさか、必ず身なりをみずぼらしくして参詣せよと御嶽がおっしゃってはいないだろう。

「反語」としての使い方ですね。

御嶽に参詣する際、ふつうはみすぼらしいみなりで行くという話に対し、「きよらかな衣服を着ていくことで、どれほどの支障があるの? 特にこれといった不都合はないでしょ! 御嶽がみすぼらしい服で来いって言っているわけじゃないでしょ」という場面です。

「ただきよらかな服を着ていくだけなら、(その程度のことで)これといったご利益があるわけじゃないでしょ」という方向で訳すこともできます。

なんでふ、さることかしはべらむ」といへば、(竹取物語)

(訳)「どうして、そのようなことをするのでしょうか」と言うと、

「副詞」として、「しはべらむ」に係っています。

かぐや姫が結婚をすすめられて、「どうして(私が)結婚をするのでしょうか」と聞く場面です。