おもしろし【面白し】 形容詞(ク活用)

目の前が明るくパアァーー

意味

(1)(景色などが)趣深い・風流だ・すばらしい

(2)(音楽などが)興味深い・楽しい

(3)心が晴れ晴れとする・愉快だ

ポイント

「面(おも)」は「正面・面前」のことであり、「白(しろ)」は「ぱっと明るい状態」を意味します。

つまり、「目の前のことがパアーっと明るく見える」ということであり、もともとは「すばらしい景色」を形容することによく使用されました。

平安時代には、景色だけでなく、音楽や芸術などにも広く用いられました。

現代語の「おもしろい」とはちょっと違うんだね。

風景などに用いている場合に「おもしろい」と訳してしまうと、けっこうニュアンスが異なります。たとえば、現代の私たちが美しい朝日などを見たとき、あんまり「おもしろい」とは言いませんよね。

ああ~。

「おもしろい朝日」とは言わないね。

古文では、そういった気分が明るくなるような景色に「おもしろし」を用いることが多いのですね。そのため「趣がある・風流だ・すばらしい」などと訳すのがふつうです。

「おもしろし」と思う対象が、音楽や文芸のようなものなら「興味深い・楽しい」などと訳せるので、こちらは現代語の「おもしろい」と少し似ていますけれど、訳語としては「おもしろい」としないほうが無難です。

例文

端に出でゐて、月のいといみじうおもしろきに、頭かいけづりなどしてをり。(大和物語)

(訳)縁側に出て座って、月がたいそう並々でなく趣深い【すばらしい】ところに、髪を櫛でとかしたりしている。

雪のおもしろう降りたりし朝、人のがり言ふべきことありて、(徒然草)

(訳)雪が趣深く【風流に】降っていた朝、(ある)人のもとに、言わなければならないことがあって、

学問をし侍りし時に、ここち常におもしろく頼もしく、思ふことなく侍りし。(宇津保物語)

(訳)学問をしておりました時に、心は常に楽しく心強く、心配することはありませんでした。