おはさうず【御座さうず】 動詞(サ行変格活用) / おはさふ【御座さふ】 動詞(サ行四段活用)

何人かでいらっしゃる

意味

(1)いらっしゃる *「あり」の尊敬語

(2)お出かけになる・おいでになる *「行く」「来」の尊敬語

補助動詞として

(3)~ていらっしゃる・~ておいでになる

ポイント

尊敬語「おはす」「あふ」がついた「あはしあふ」が「おはさふ」になったと言われています。

訳語自体は「おはす」と同じでOKですが、「あふ」が複数の人間を主語に持ちやすい動詞であることから、「おはさふ」も複数の人間を主語に持ちやすいです。

「いあわせる」とか「いっしょに何かをする」とか、そういったことの尊敬表現なんだね。

そうですね。

その「おはさふ」にサ変動詞「す」がついて、「おはさひす」となったものが、音便化して「おはさうず」になりました。訳としては「おはさふ」と同じと考えてOKです。

この理屈でいうと、「おはさうず」のほうも、複数の人間を主語に持ちやすいということだな。

まさしくそうなります。

「おはさふ」も「おはさうず」も、複数の人間の行為を示すことが多いですね。

そのため、「いっしょに」とか「ともに」といった表現を付して訳すこともあります。

例文

御手箱に置かせたまへる小刀申して立ちたまひぬ。いま二ところも、苦む苦むおのおのおはさうじぬ。(大鏡)

(訳)(道長は)御手箱に置いていらっしゃる小刀をいただいてお出かけになった。もうお二方【道隆と道兼】も、苦い顔をしながらそれぞれお出かけになった。

碁打ちさして、恥ぢらひておはさうずる、いとをかしげなり。(源氏物語)

(訳)(二人の姫君が)碁を打つのを止めて、恥ずかしそうにしていらっしゃるご様子は、たいそうかわいらしい。

みな深き心は思ひわかねど、うちひそみて泣きおはさうず。(源氏物語)

(訳)皆は深い事情はわからないけれど、べそをかいて泣いていらっしゃる

このおはさふ人々に、「さは、いにしへは、世はかくこそ侍りけれ。」と、聞かせ奉らむ。(大鏡)

(訳)この(いっしょに)いらっしゃる人々に、「それでは、昔は、世の中はこのようでございました。」と、お聞かせ申し上げよう。