てうず【調ず】 動詞(サ行変格活用)

秩序におさめる

意味

(1)整える・こしらえる・作る

(2)調達する

(3)調理する

(4)調伏ちょうぶくする・こらしめる

ポイント

「調」+「す」の複合語です。

「周」という字は、もともと「稲を植えめぐらせた田」の形象で、あまねく行き届いているさまを意味しています。「用意周到」の「周」ですね。「言」は、「ことばや考え」を意味するので、「調ず」というのは、「考えをもって整える」という意味合いになります。

「調ず」なのに、「ザ行」ではないの?

もとが「調」+「す」なので、「サ行」とみなします。

「念ず」「信ず」「重んず」など、「サ変」の「す」がつくことによって成立した複合語は、結果的に「ず」と発音することになっても、「サ行変格活用」といいます。

あと、意味のところにある「調伏」っていうのは何なの?

これは仏教用語で、「心身を整えて、悪行を制すること」を意味します。

悪霊や物の怪などの外敵に使えば、「加持祈祷をして、悪さをしている存在を鎮圧する」ということになります。「降伏こうぶく」ともいいます。

「調ず」というのは、根本的には「秩序のなかにおさめる」ことなのですね。混乱をもたらす「悪霊・物の怪」などを「キュッとしぼる」ことだと考えてください。

ああ~。

トムとジェリーでいうと、さんざん暴れまわったトムが、ジェリーの用意したワナにかかって、小さな箱にキュッとおさまっておとなしくなっちゃうような感じかな。

キュッと四角くなったトムは、まさに調伏されたような感じですね。

なお、「てうず」は、このことから発展して、「こらしめる」という意味でも使います。その際は「てうず」の字をあてることもあります。

一説には、③④の意味は「懲ず」が混同したものかもしれないと言われています。

例文

よくてうじたる火桶の灰の際清げにて、(枕草子)

(訳)上手にこしらえた火桶の、灰の際がきれいで、

この羊を調じ侍りてよそはんとするに、(宇治拾遺物語)

(訳)この羊を調理しまして盛り付けようとするが、

験者の「ものの怪調ず」とて、(枕草子)

(訳)修験者が「物の怪を調伏する」といって、

この翁丸うちてうじて、犬島へつかはせ。ただいま。(枕草子)

(訳)この翁丸を打ちこらしめて、犬島へ流せ。今すぐ。