仕ふ+奉る
意味
(1)お仕え申し上げる *謙譲語
(2)し申し上げる・してさし上げる *謙譲語
(3)いたす・いたします *謙譲語・丁寧語
(4)~し申し上げる・~してさしあげる *謙譲語
ポイント
誰かに仕えるという意味の「仕ふ(つかふ)」に「奉る(まつる)」がついた「つかへまつる」が「つかうまつる」になり、「つかまつる」になりました。「仕える」という行為を受け取る相手を高める表現なので、「謙譲語」になります。
誰かに仕えるということは、様々なことを「してさしあげる」わけなので、具体的な一つ一つの行為に用いることもあります。
また、誰かに仕えているわけでもなく、神仏や貴人に向かう行為でもなく、「つかまつる」が用いられることがあります。その場合は、「会話の語調」を丁寧にしている用法と考え、「丁寧語」と判断します。
単純に「仕える」ということではなくて、「偉い人」に「お仕え申し上げる」ということなんだな。
そうです。
ただ、「人」とは限らなくて、「神仏」などの場合もありますね。
「つかうまつる」と「つかまつる」は違いがあるのかな?
「つかうまつる」⇒「つかまつる」となっていったこともあり、中世以降はほとんど「つかまつる」のほうです。
あとは、「つかまつる」が増えてくるにしたがって、(3)の用法が増えてきます。会話文の中で「聞き手」への敬意を示す「丁寧語」としての表現は、ほとんど「つかまつる」のほうですね。
例文
身の才やむごとなくして、公につかまつりけるほどに道心を発して出家せるなり。(今昔物語集)
(訳)才能がこのうえなくて、朝廷にお仕え申し上げていた間に、道心を起こして出家したのである。
山門の大衆、みだりがはしきうつたへつかまつること、(平家物語)
(訳)延暦寺の僧の集団が、無作法な訴えを(朝廷に)し申し上げること、
あやまちは、やすき所になりて、必ずつかまつる事に候ふ。(徒然草)
(訳)失敗は、簡単なところになって、必ずいたす(いたします)ことでございます。
この例文は、「神仏」や「貴人」に対する行為ではないので、「謙譲語」ではなく、語調を丁寧にしている使用法だと言えます。したがって、「丁寧語」だと考えます。