「人間の営為」と「何か」がミスマッチ!
意味
(1)ふさわしくない・似つかわしくない・不調和だ・適切でない
(2)取りつくすべがない・(目的に向かう)手がかりがない・手だてがない
ポイント
動詞「付く」の連用形「つき」に、形容詞「無し」がついたものです。
「つきづきし」の対義語として理解しておくと、訳しやすいと思います。
「つきづきし」は、「人間の営為・人間の作った物」と「何か」が「調和している」ということだったから、「付き無し」は、その逆で「調和していない」ということなんだな。
そういうことになります。
また、「付き無し」は、「目的に対してくっつきに行く方法がない」という意味合いで、「取り付くすべがない」「(調和を図る)手がかり・手だてがない」などと訳すことがあります。
「ミッション・インポッシブル」みたいな感じだね。
そうですね。
「調和させようがない」という状態ですね。
ことわざでいうと、「取り付く島もない」というイメージです。
例文
これ破り隠したまへ。むつかしや。かかる物の散らむも、今はつきなき程になりにけり。(源氏物語)
(訳)これ(女性からの文)を破って隠してください。見苦しいことだ。このような物が(部屋に)散らばっているようなことも、今はふさわしくない【似つかわしくない】年齢になった。
逢ふことの 今ははつかに なりぬれば 夜深からでは つきなかりけり (古今和歌集)
(訳)(あの人と)逢うことが、今はわずかになってしまったので、夜深くからでないと、逢う手だてがないことだなあ。【二十日になってしまったので、夜が更けないと月が出ないことだなあ】
「親、君と申すとも、かくつきなきことを仰せたまふこと」と、事行かぬものゆゑ大納言をそしりあひたり。(竹取物語)
(訳)(大納言から、龍の首にある玉を取ってくるように命じられた家来たちは)「いくら親や主君と申しても、このような取り付くすべがない【手がかりがない】ことをお命じになることとは」と、納得がいかないので大納言を非難しあっている。
西の対には、ましてめづらしくおぼえたまふことの筋なれば、明け暮れ書き読みいとなみおはす。 つきなからぬ若人あまたあり。(源氏物語)
(訳)(人々が没頭する絵や物語などの遊びごとは)西の対【玉鬘】にとっては、まして新鮮にお思いになる事柄であるので、毎日写したり読んだりしていらっしゃる。(その遊びごとの相手をするのに)ふさわしい【ぴったりの・うってつけの】若い女房たちが大勢いる。
「つきなからぬ」の「ぬ」は、打消の助動詞「ず」の連体形です。
ということは、「ふさわしくない・似つかわしくない」ということを「ず」で打ち消すことになるので、「ふさわしくないことはない」という文意になります。
意味的には二重否定のような構造になり、逆に「実にふさわしい」と肯定しているような表現になります。そのことから、「うってつけの」「ぴったりの」「まさに適した」といったように、「ふさわしい」を強めた表現で訳してもOKです。