打ち消しを伴って「確実性の低さ」を示しやすい
意味
(1)めったに(~ない)・ほとんど(~ない)・なかなか(~ない) *打消表現を伴う
(2)たしかに・しっかり・きちんと
ポイント
「長(をさ)」を重ねたことばです。
「をさ」は、年齢や能力が長じていることを示しますので、どちらかというと(2)の「しっかりしている」「きちんとしている」という意味のほうが原義に近いです。
たとえば、「幼し(をさなし)」という語は、この「長(をさ)」が「無し」であることを示すことから、「年少だ・幼稚だ」という意味になります。
ただ、実際の用例としては、下に打消表現を伴い、(1)のように「めったに(~ない)・ほとんど(~ない)・なかなか(~ない)」という意味で用いることがほとんどです。
でもどうして、もともと「たしかに・しっかり」という意味である「をさをさ」が、下に打消表現を伴うと、「めったに・ほとんど・なかなか」という意味になるんだろうね。
「をさ」というのは、「長じている」ことであるので、「をさをさ~す」とか「をさをさ~なり」と言った場合、「しっかり~する」「たしかに~である」という意味になりますよね。つまり、その「確実性」の「高さ」を述べていることになります。
それを打ち消した場合、逆にその「確実性」の「低さ」を述べることになります。
ああ~。
「たしかにそうなる」の逆になるわけだから、「ほとんどそうならない」「めったにそうならない」「なかなかそうならない」ということになるわけだね。
そういうことですね。
例文
さて、冬枯れの気色こそ、秋にはをさをさ劣るまじけれ。(徒然草)
(訳)さて、冬枯れの様子こそ、秋にはなかなかひけをとらないだろう。
古人もこの国に春を愛すること、をさをさ都に劣らざるものを。(去来抄)
(訳)昔の歌人もこの国【近江国】で春を愛することは、ほとんど都に劣らないのに。
よろづの人の「婿になり給へ」と、をさをさ聞こえ給へども、さも物し給はず。(宇津保物語)
(訳)多くの人が「婿におなりになれ」と、はっきりと申し上げなさるけれども、そのようにもなさらない。