おぼしめす【思し召す】 動詞(サ行四段活用)

とても偉い人が何かお思いになる

意味

(1)お思いになる

ポイント

尊敬語「おぼす」に尊敬語「めす」がついたものです。

「おぼす」は「思ふ」の尊敬語で「お思いになる」ということです。

「めす」は「呼ぶ」などの尊敬語ですが、ここでは「敬意」を一段階高めるためにつけているような構造ですので、訳出しなくて大丈夫です。

したがって、訳としては「おぼす」と同じように「お思いになる」とすればOKです。

「おぼす」よりも敬意が高く、基本的には「天皇・中宮・上皇・皇太子」など最高ランクの人の行為に用いる動詞です。

「天皇・皇后・上皇・皇太子」の行為に使うということは、「最高敬語」ということかな。

そうですね・・・。

「手紙文」などでは、相手を高めるために「皇族系の第一級の人」でなくても用いることがありまして、「トップ級の人にしか使わない」というわけでもないんですね。そういう観点で「最高敬語」の一覧に含める立場もあれば、含めない立場もあります。

ただ、基本的に「地の文」では「天皇・皇后・上皇・皇太子」といった「トップ級」の人の行為に用いることばなので、「最高敬語」と考えていいと思いますけどね。

例文

いかでなほ、少しひがごと見つけてをやまんと、ねたきまでにおぼしめしけるに、十巻にもなりぬ。(枕草子)

(訳)(『古今集』の問いかけについて、宣耀殿の女御の返答に誤りがないことに、帝は)なんとかしてやはり、少しでも間違いを見つけて終わりにしようと、くやしいほどお思いになったが、(間違いがないまま『古今集』は)十巻にもなってしまった。

これによりて思へば、なほ我既に死ねと思ほしめすなり。(古事記)

(訳)(景行天皇が、息子である倭健命に、西の征伐の後すぐ東の征伐に行くよう命じたことをうけて)これによって考えると、(天皇は)やはり私【倭健命】に、もはや死ねとお思いになるのである。

この例文は「おもほしめす」の形ですね。主に上代のことばであり、中古では見られません。

この「おもほしめす」が、そのまま一語化したものが「おぼしめす」であるという考え方もあります。