意味
(1)すぐには(~ない)・急には(~ない) *打消表現を伴う
ポイント
「頓(とん)」という漢語がありまして、「ん」表記がなかった時代に「とに」と表記していたようです。「に」が「み」と発音されるようになったのが、形容動詞「とみなり」です。
その連用形である「とみに」が、直接用言に係っていくケースが増えていくのですが、その用例は、たいていは下に打消表現を伴い、「急には~ない」「すぐには~ない」という表現になります。
その際の「とみに」は、かなり固定化された言い回しになりますので、「副詞」に分類されます。
「とみなり」から覚えておいたほうがよさそうだな。
定期試験や入試の水準で考える場合、
(1)直接用言を修飾している。
(2)「ず」「で」「~なし」など、打消表現とセットになっている。
という2つの条件を満たしている「とみに」は、「副詞」と考えます。
逆に、「とみに」という形になっていても、打消表現を伴っていないものは、「形容動詞の連用形」と考えておきましょう。
例文
車を差し寄せてとみにも乗らで待たするも、(枕草子)
(訳)車を近づけて(いるのに)、すぐには乗らないで待たせるのも、
とみに気色なうおはしましけるやうにぞ奏しけむかし。(源氏物語)
(訳)すぐには様子がわからずにいらっしゃったと申し上げたのだろうよ。
「何とかこれをばいふ」と問へば、とみにも言はず、「いさ」など、これかれ見あはせて、(枕草子)
(訳)「なんとこれを呼ぶのか」と問うと、すぐには答えず、「さあ」などと、めいめい(顔を)見合わせて、
「とみに~打消表現」で、「すぐには~ない」という訳をするケースが多いですね。
「呼応の副詞」と言ってもさしつかえないと思います。