はべり【侍り】 動詞(ラ行変格活用)

(貴人の近くに)はいつくばる

意味

謙譲語

(1)お仕えする・(おそばに)控える *「仕ふ」「あり」などの謙譲語

丁寧語

(2)あります・おります・ございます 

(3)~ます・~です・~ございます *補助動詞として

動詞「ふ」に「あり」がついて「這ひあり」となったものが、やがて「はべり」になったと言われています。

貴人に対して「平伏して仕える」ということから、「お仕えする」「控える」という謙譲語の役割を担いました。

「主体を低くする謙遜表現」として、次第に丁寧語で使われることが多くなりました。補助動詞の場合は100%丁寧語と考えます。

「さぶらふ」に似てるんだな。

現代語訳の観点ではほとんど同じですね。

ただ、平安中期の用法としては、「さぶらふ」のほうが、「貴人の役に立つ行動をする」意味合いが強く、「はべり」のほうは、「恐縮しておそばにいる」ということを意味しやすいです。そのため「はべり」のほうは、「客体を高める・・・・・・謙譲語」というよりは、「主体を低める・・・・・・謙譲語」のニュアンスが強いです。

そのように「はべり」「へりくだるための敬語」として使用されていったので、平安時代には、ほとんどが丁寧語の扱いになっていきました。会話や手紙のなかによく登場します。

もともとは、「たいした者ではない自分のようなものが身を低くしておそばにおりますよ」という意味だったものが、次第に、「おります」「あります」「ございます」といった「丁寧な表現」全般に使用されていくということだな。

そうです。

ただ、おいかけるように「さぶらふ」も「丁寧語」として使用されるようになり、平安時代末期には、「さぶらふ」の使用数のほうが圧倒的に多くなります。そのぶん「はべり」は少なくなっていきます。

次第に、「はべり」「古いことば」と認識されていき、鎌倉時代以降は、会話に「はべり」を用いることはほぼなくなっていきます。

ただ、「文章家」たちの「文章」には残っていまして、兼好の『徒然草』や、芭蕉の俳諧文などの地の文には登場します。

ああ~。

いまでも、現代文の評論や随想を読むと、「けだし」とか「しかるに」とかが出てきて、「昔からあることばを使っているなあ」と思うことがあるけど、兼好とか芭蕉とかもそういった感じだったんだろうな。

「ことばの達人」として、2人とも日本史上「Sランク」ですからね。

例文

「このわたりのうかれめども、あまたまゐりてさぶらひけるなかに、声おもしろく、よしあるものははべりや」と問はせたまふに、(大和物語)

(訳)「このあたりの遊女たちで、ここに大勢参ってお仕えするなかに、声がすばらしく、由緒ある者は控えているか」と(帝が)お尋ねになると、

いみじう忍びたまひければ、知りはべらで、ここにはべりながら、御とぶらひにもまうでざりける。(源氏物語)

(訳)(源氏が)たいそうお忍びでいらっしゃったので、(私は)存じませんで、ここにおりますのに、お見舞いにも参上しなかった。