こまやかなり【細やかなり・濃やかなり】 形容動詞(ナリ活用)

行き届いているフルハイビジョン

意味

(1)きめこまやかだ・繊細だ

(2)綿密だ・くわしい・こまごまとしている

(3)心がこもっている・愛情深い・懇切丁寧だ

(4)色が濃い

(5)にこやかに  *「笑ふ」を修飾して

ポイント

繊細で綿密なようすを意味しています。

類義語に「こまかなり」があります。それほど大きな違いはないのですが、「こまかなり」のほうは、シンプルに「物体の見た目がこまごまとしていること」に使用されやすい語です。

「こまやかなり」のほうは、人間関係の親密さ、所作のきめこまやかさ、愛情の深さ、色の濃さなどにも広く用います。

色が濃い?

こまやかなことと関係あるの?

ドット絵ってあるじゃないですか。

方眼紙の□を塗りつぶしていって、絵を描くようなやつだな。

こういうやつ。

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そうそう、そういうやつです。

それ、方眼の網目が小さくて細かいほうが、もっと緻密に色をつけられますよね。

ああ~。

たしかに、ギュッと密集していたほうが、ギュッとした色彩にできるね。

要するに「解像度」のことですね。

ある四角のなかを、20×20分割するのと、300×300分割するのとでは、後者のほうが繊細で美しい色が出せます。

そういうことから、花の色や、着物の色などを「こまやかなり」と形容する場合、「色が濃い」と訳すことがあります。

例文

身なり肌つきのこまやかに美しげなるに、(源氏物語)

(訳)からだつきや肌のようすがきめこまかくかわいらしいので、

今はなほ、昔のかたみになずらへてものし給へなど、こまやかに書かせ給へり。(源氏物語)

(訳)今はやはり、桐壺更衣の形見と思って参内なさいなどと、心をこめて【懇切丁寧に】お書きになっている。

奥に人や添ひたらむと、後ろめたくて、えこまやかにも語らひ給はず。(源氏物語)

(訳)奥に人がいっしょにいるだろうかと、気がかりで、こまごまとお話になることもできない。

この聖、声うちゆがみ、あらあらしくて、聖教のこまやかなることわり、いとわきまへずもやと思ひしに、(徒然草)

(訳)この僧【尭蓮上人】は、声になまりがあり、荒々しくて、仏典の緻密な【くわしい】道理は、それほどわきまえていないのかと思っていたが、

御衣の色などもいとこまやかなるもあはれなり。(栄花物語)

(訳)御喪服の色などもたいそう濃いのもしみじみと悲しい。

さるは、「思ふやうなる木持て参りたり」とて、衣かづけられたりしも、辛くなりにきとて、こまやかに笑ふ。(徒然草)

(訳)そうであるから、「思いどおりの木を持ってまいった」ということで、(褒美の)衣を与えられたことも、つらくなってしまったと言って、にこやかに笑う【情感深く笑う】。