ばや 終助詞

意味

① ~たい *自己の願望

② ~てほしい *物事のありようにおける願望

③ ~う・~よう *意志 (中世以降)

④ ~ない *打消 (中世以降)

ポイント

もともとは、「未然形+ば」に係助詞の「や」がついて、「もし~ならば、……か」という構文をつくっていたのですが、「ばや」の後ろが省略されることも多くなり、一語の「終助詞」のように使われ始めたものです。

ああ~。

「未然形+ば」で「仮定条件」になるってやつだな。

そうです。

たとえば、「酒飲まばや、心地よからむ。」という文があったとして、普通に訳せば「もし酒を飲んだならば、気分がよいだろうか。」となりますね。

この後半をあえて言わなければ、「もし酒を飲んだならば……」となります。

この言い方は、文脈上、「酒を飲みたい」という意識で用いられることが多いのですね。

そういったことから、「~ばや……」は、もともとの意味は「もし~ならば……か」なのですが、終助詞として用いられている場合には、その「~」の部分が「願望」を示しているのだと解釈して、「~たい」「~てほしい」と訳すことになります。

そもそもの成り立ちとしては、「もし~ならば」という意味であって、「~たい・~てほしい」というのは、「もともとは表現されていない真意」みたいなもんなんだな。

そのため、どちらでも訳せるケースもけっこうあります。

たとえば、『万葉集』に

衣しも多くあらなむ取りかへて着なばや君が面忘れてあらむ

という一首があります。

この「着なばや」などは、「着物がたくさんあってほしい、それらを取りかえて着たならば、あんたの顔も忘れるだろうか」とも訳せますし、「それらを取りかえて着たい」と訳すこともできます。

そうかそうか。

ほかにも、たとえば「銭があらばや」であれば、表現上は「もし銭があれば…」ということですね。

この「ばや」を終助詞でとると、通常は「銭があってほしい」と訳すんですけど、文脈によっては、「銭がまったくない!」というように「打消」として訳すこともあります。

もともとが「もし銭があれば・・・」という意味だから、「あってほしい!」と訳すこともあれば、「今はないんだ!」と訳すこともあるんだな。

まあ、そうはいっても、定期試験や入試で問われるのは、①②の「願望」の意味ですから、まずは「~たい」「~てほしい」と訳しておけば大丈夫です。

ただ、中世以降の作品で、選択肢問題の場合、「全くない!」という訳が正解になる可能性はあります。

なんか参考書とかを読んでると、「希望」と「願望」が混在してるんだけど、それはどっちが正しいの?

それはどっちでもいいです。

文法書によっては、「自分自身の希望」と「他者への願望」みたいに言葉遣いを分けているものもあるのですが、定期試験や入試において、「希望」と「願望」の文法的意味に違いはありません。

例文

世の中に物語といふもののあんなるを、いかで見ばやと思ひつつ、(更級日記)

(訳)世の中に物語というものがあるとかいうのを、何とかして見たいと思いながら、

今様一つあらばや。(平家物語)

(訳)(うれしいときなので)今様が一曲あってほしい

酒はのませたし銭はあらばや。(若木詩抄)

(訳)酒はのませたい、(しかし)銭はまったくない

客人を留めまゐらすとも、参らすべきものもあらばや。(折たく芝の記)

(訳)客人を引き留め申し上げても、差し上げるべき食べ物もまったくない