こころばへ【心延へ】 名詞

にじみでる心のオーラ

意味

(1)気立て・性質・性格・気質

(2)気配り・心遣い・配慮・意向・趣向

(3)風情・情趣・趣き

ポイント

「心」に、下二段動詞「延ふ(はふ)」の連用形がついて名詞化したものです。

「心」が「伸び広がって外側に出てきている」ということなので、要は「外からみてわかるほどの性質・気質」という意味合いになります。シンプルに訳すなら「気立て」がいいですね。

それが「ある対象」に向かっている場合は、「気配り・心遣い・意向」などと訳せばOKです。

「相手を思いやる気持ち」が向かっているなら「気配り・心遣い」などと訳す感じで、「考え」みたいなものが目標に向かっているなら「意向」とか「趣向」と訳す感じかな。

まさにそういう訳し分けでOKです!

和歌を詠んだり、庭を作ったりするときの「意向」は「趣向」と訳したりしますね。

でも、そうすると(3)の「風情・情趣・趣き」っていうのがちょっと謎だね。

自然や物体など「人ではないもの」の「心ばへ」について語っている場合は、「風情・情趣・趣き」などと訳します。

「風景」とかに「心」があるとして、その心が外側ににじみでているようなイメージです。

ああ~。

たしかに、「モノ」が主語のときに「心遣い」って訳したりすると変だもんね。

ちなみに、「心ばせ」という名詞もありまして、こちらも「心ばへ」と同じように「気立て・性質」「心遣い・配慮」などと訳します。

「心ばせ」の「はせ」は接尾語とも言われますが、「心」に「馳せ」がついたものだという説もありまして、その説にしたがうと、「心」が対象に向かって「走る/駆ける」といった意味合いになります。

その意味で「心ばせ」は、ポジティブで活発な心の状態だといえます。そういうこともあって、「心ばせ」のほうは、「褒め言葉」の文脈でしか出てきません。

例文

心ばへなどあてやかにうつくしかりつることを見ならひて、(竹取物語)

(訳)(かぐや姫の)気立てなどが上品でかわいらしかったことを見慣れていて、

大将の御心ばへもいと頼もしげなきを、(源氏物語)

(訳)大将【源氏】のお心遣いもそれほど頼りにならないので、

鐘の声松風に響きあひてもの悲しう、岩に生ひたる松の根ざしも、こころばへあるさまなり。(源氏物語)

(訳)鐘の音が松風に響き合ってもの悲しく、岩に生えている松の根の張り方も、情趣がある様子である。

卯の花、花橘などに宿りをして、はた隠れたるも、ねたげなる心ばへなり。(枕草子)

(訳)(ほととぎすが)卯の花や花橘にとまって、姿がまた隠れているのも、にくらしい風情である。