まだし【未だし】 形容詞(シク活用) / まだき【未だき】 副詞

時期尚早!

意味

まだし 形容詞

(1)機が熟さない・まだ時期が早い

(2)まだ整わない・未熟だ・不十分だ(まだ足りていない)

まだき 副詞

(1)早くも・もう

ポイント

形容詞「未だし(いまだし)」の語頭の「い」が落ちたものが、形容詞「まだし」です。

「未だに適した状態になっていない」ということから、「時期が早い」とか、「不十分だ」といった意味で用います。

その語幹から、「まだき」「まだ」という副詞が派生したと考えられています。副詞の場合、「まだ時期が早い」あるいは「未熟」であるにもかかわらず、ある事態・現象が起きてしまう文脈で使用されやすく、訳としては「もう(そうなってしまう)」「早くも(そうなってしまう)」などのようになります。

なんか、「まだし」っていうと、現代の若者言葉でみたいだね。

「宿題やった?」「まだし~」みたいな。

ああ~。

若者は、「違うし」とか「むかつくし」とか「やめろし」とか、いろんな言葉に「~し」をつけますからね。

「むかつくし」なんて、意味的にも「むくつけし」に似てるよね。

「むくつけし」は、現代の若者ことばでいうと「キモっ」みたいな意味なので、「言われた側がいやな思いとする」という点では似ていますね。

これからの若者は、そのうちたぶん「こころうし」とか使い始めるよ。

そうなってくるとおもしろいですね。

例文

供なる男どもも、いみじう笑ひつつ、「ここまだし、ここまだし」と差しあへり。(枕草子)

(訳)(卯の花で装飾した車を見て)お供である【車副くるまぞひである】男たちも、たいそう笑いながら、「ここが不十分だ【まだ足りない】、ここが不十分だ【まだ足りない】」と(車に卯の花を)差しあっている。

形容詞「まだし」の終止形です。

わが袖に まだき時雨の 降りぬるは 君が心に 秋や来ぬらむ (古今和歌集)

(訳)わたしの袖に、早くも【もう】時雨が降ったのは【涙で濡れたのは】、あなたの心に秋【飽き】が来たからだろうか。

副詞「まだき」であり、「降りぬる」に係っています。

あかなくに まだきも月の 隠るるか 山の端にげて 入れずもあらなむ (伊勢物語)

(訳)満足しないのに【名残惜しいのに】、早くも【もう】月が隠れるのか。山の稜線が逃げて、(月を)入れないでいてほしいなあ。

副詞の使い方はこのように、「まだきも」「まだきに」といった表現も多いです。