ゆゆし 形容詞(シク活用)

近づくべきではない禁忌

意味

(1)不吉だ・はばかられる・おそれおおい・神聖だ

(2)並々でない・はなはだしい

(3)すばらしい・立派だ

(4)ひどい・とても悪い

ポイント

という語が重なって形容詞化しました。

「斎」は、人間が軽はずみに近づいてはならない神聖な場所(もの)、または不浄な場所(もの)を表しています。

そのことから、霊的な存在感ゆえに忌避したいものに対して「ゆゆし」と形容するようになりました。

人智を超えた存在の話題に使用していれば、「不吉だ」「神聖だ」などと訳しますが、人間世界の話に使用していれば、程度面で「並々でない」、プラスの文意で「すばらしい」、マイナスの文意で「ひどい」などと訳すことになります。

考え方が「いみじ」に似ているね。

「ゆゆし」と「いみじ」は、かなり似た使い方をされます。

「ゆゆし」のほうが、比較的「神仏的なもの」や「霊的なもの」の話題に使用されやすいですけど、きっぱりとした区別はできません。人間世界のことに使用していればほぼ同じ意味ですね。

実際、「忌忌し」と書いて「ゆゆし」と読むこともあります。

例文

上下泣き騒ぎたるは、いとゆゆしく見ゆ。(源氏物語)

(訳)身分が上の者も下の者も泣き騒いでいるのは、たいそう不吉に見える。

ただ人も、舎人など賜はるるきははゆゆしと見ゆ。(徒然草)

(訳)普通の貴族も、舎人などの役職をいただく身分はすばらしいと思われる。

おのおの拝みて、ゆゆしく信おこしたり。(徒然草)

(訳)人はそれぞれ拝んで、並々でなく信仰心をおこした。