さうなし【双無し・左右無し】 形容詞(ク活用)

比べられない!

意味

双無し

(1)比類ない・類ない・二つとない

(2)すばらしい

左右無し

(1)決着がつかない

(2)あれこれ考えない

(3)たやすい・簡単だ・無造作だ

ポイント

「双無し」であれば、「比べるものがない」ということであり、「比類ない」「すばらしい」などの「ほめ言葉」になります。

「左右無し」であれば、「左とも右とも言えない」という意味合いで、「どちらかに決められない」などと訳します。あるいは、「左…右…とあれこれ考えずにできてしまう」という意味合いで、「たやすい」「簡単だ」「造作もない」などと訳します。

これも、ひらがなで書かれていると区別しにくいやつだな。

ごくまれに、「左右なし」を、「比類ない・すばらしい」と訳す場合がありまして、そのため、漢字で書かれていても注意が必要です。

時代が下ると混同が起きてくるパターンか!

そうかもしれません。

あるいは、「左右なし」という語を、「左側にも右側にも並ぶものがいない ⇒ 比類ない・すばらしい」というニュアンスで使用しているパターンですね。

ただ、これは一般的には辞書には掲載されていないので、「例外扱い」でいいと思います。

そのレベルの例外なら、入試においては無視できるな。

入試の水準で話すと、「左右無し」のほうは、③の「たやすい・簡単だ」の意味でよく出てきますので、まずはそちらで考えるほうがいいと思います。

「さうなし」というひらがながあったら、「双無し」をイメージして「比類ない・すばらしい」と訳すか、「左右無し」をイメージして、「たやすい・簡単だ」と訳すか、そのどちらかになるのが主流ですね。

「すばらしい」or「たやすい」なら、全然違う意味だから、なんとか文脈判断できそうだな。

例文

園の別当入道はさうなき庖丁者なり。(徒然草)

(訳)園の別当入道はすばらしい料理人である。

しやつがくびさうなうきるな。(平家物語)

(訳)そいつ【西光法師】の首をたやすく【簡単に】切るな。

「さうなう」は、「左右なく」のウ音便です。