に (まぎらわしい語の識別)

「に」というひらがなについて、まぎらわしいものは7つくらいの区別があるので、試験で問われると非常にややこしいです。

ああ~。

鬼の7択問題とかになるよね。

まあその場合も、選択肢があるだけマシだという強い気持ちで挑んでいきましょう。

「に」の識別

(1)形容動詞(ナリ活用)の連用形の活用語尾

豊かに暮らす」「静かに思ふ」「いと幼げにて」のように、「に」の直前のことばが「状態・性質」を表している場合、「○○に」は、「一語の形容動詞の連用形」と考えます。

この場合、(いと)豊かに、(きはめて)静かに、といったように、直前に「いと」「きはめて」などの「程度の副詞」をつけてみて、文意が通るかどうか確認するといいですね。

(2)断定の助動詞「なり」の連用形

〈体言〉+「に」+「あり」という組み合わせの場合、その「に」は断定の助動詞「なり」の連用形です。この〈体言〉は、〈活用語の連体形〉の場合もあります。

このとき、「に」と「あり」の間には、「て」「ぞ」「も」など、何らかの助詞が入ることがほとんどです。

注意点が3つあります。

(1)「あり」は省略されることがあります。

(2)「あり」ではなく、「候ふ」「はべり」「おはす」などの語である場合があります。これらの動詞は、敬意を外せば根本的には「あり」の意味になります。

(3)「〈体言〉にあらず」のように、「に」「あり」の間に助詞がないこともあります。

(3)完了の助動詞「ぬ」の連用形

「活用語の連用形」についている「に」は、完了の助動詞「ぬ」の連用形です。

「行きけり」の「に」ですね。「けり」は過去の助動詞です。

「~にけむ」「~にき」「~にたり」という表現もしばしば目にしますが、多いのは「~けり」というセットです。

(4)格助詞

「体言」や「活用語の連体形」についていて、場所・時間・対象・目的などを示しているものは、「格助詞」の「に」です。

これは現代語の使い方にかなり近いので、口語訳する際にも、そのまま「に」とすればよい場合が多いです。

(5)接続助詞

「活用語の連体形」についていて、直後の表現と「順接」「逆接」「単純接続」などの関係をつくるものは「接続助詞」です。

ただし、この「接続助詞」の「に」は、もともとは「格助詞」であったものなので、(4)と(5)を区別できない場合もけっこうあります。

(6)ナ変動詞の連用形の活用語尾

「死ぬ」「ぬ(ぬ)」の連用形の活用語尾です。

「往けり」などの「に」がこれにあたります。

試験で問われる場合にはたいてい「死」「往(去)」が漢字で書かれていますので、そこを見落とさないようにしましょう。ひらがなのまま問われることも、たまに……あります。

(7)副詞の一部

「実に(げに)」「世に(よに)」など、活用しない自立語として、主に連用修飾語として機能しているものは「副詞」と考えます。

ただし、「○○に」というタイプの副詞は、「形容動詞の連用形」が副詞として定着していったものも多いため、(1)と(7)を区別できない場合もけっこうあります。

たとえば、「とみに」という語は、形容動詞「とみなり」の連用形とも考えられますし、副詞と考えることもできます。そういう曖昧なケースが試験で問われることはありません。

例文

あはれに思ひ知られけむ。(堤中納言物語)

(訳)しみじみと思い知られただろう。

(1)形容動詞(ナリ活用)の連用形の活用語尾です。

「あはれに」で一語の形容動詞であり、終止形は「あはれなり」です。

直前に「いと」「きはめて」といった「程度の副詞」をつけることができる場合、まとめて一語の形容動詞と考えます。

心といふもののなきやあらむ。(徒然草)

(訳)心というものがないのあろうか。

(2)断定の助動詞「なり」の連用形です。

〈体言〉+「に」+「助詞」+「あり」のパターンです。

ここでいう〈体言〉は、この例文のように、〈活用語の連体形〉であることもあります。

幼き人は寝入りたまひけり。(宇治拾遺物語)

(訳)幼い人は寝入りなさっ

(3)完了の助動詞「ぬ」の連用形です。

「~にけり」のかたちが多いですね。

いま静かに御局さぶらはん。(枕草子)

(訳)そのうちゆっくりとお部屋参りましょう。

(4)格助詞です。

現代語と同じように、「場所」「時間」「対象」「目的」などを示します。

訳もそのまま「に」となることが多いですね。

十月つごもりなる、もみぢ散らで盛りなり。(更級日記)

(訳)十月の下旬であるのに、紅葉が散らないで盛りである。

(5)接続助詞です。ここでは「逆接」の用法になります。

〈活用語の連体形〉に、

という場合の「に」は、(4)格助詞(5)接続助詞の可能性があります。

この2つは区別しにくいのですが、「格助詞」の場合には、「とき」「こと」「もの」といった「体言」を補ったほうが訳しやすくなります

一方、「接続助詞」の場合は、「に」の直前に「とき」「こと」「もの」といった「体言」を補うと訳しにくくなります。この例文がそのケースですね。

据えなほして往にければ、(徒然草)

(訳)置きなおして立ち去ってしまったので、

(6)ナ変動詞の連用形の活用語尾です。

ナ変動詞は「死ぬ」「往ぬ(去ぬ)」の二語ですので、「死」「往」「去」の字に注意しておきましょう。

梨の花、よにすさまじきものにして、(枕草子)

(訳)梨の花は、非常に興ざめなものとして、

(7)副詞の一部です。

「げに」「よに」「つひに」あたりがよく問われます。