にて (まぎらわしい語の識別)

「にて」というひらがなについて、まぎらわしいのは次の3つです。

「にて」の識別

(1)形容動詞ナリ活用の連用形の活用語尾+接続助詞「て」

「○○にて」の「○○」の部分が、何かの状態や性質を示している場合、「○○に」と「て」で区切って考えます。

たとえば、「清げにて」の場合、「清げに」は形容動詞「清げなり」の連用形です。「いたづらにて」の場合、「いたづらに」は形容動詞「いたづらなり」の連用形です。

直前に「いと」「きはめて」といった「程度の副詞」を入れてみて、おかしくなければ「形容動詞」と判断できます。

(2)断定の助動詞「なり」の連用形+接続助詞「て」

「体言」+「に」+「て」+「あり」

というセットになっている場合、「に」は断定の助動詞「なり」の連用形です。

まれに「体言」が省略され、「活用語の連体形」+「にてあり」となるときもあります。

また、ここでの「あり」は、「おはす」「はべり」といった敬語になっている場合もあります。または、省略されていることもあります。

(3)格助詞

「体言」+「にて」のセットが、

〈場所〉にて
〈時〉にて
〈手段〉にて

などの意味になっている場合、「にて」は格助詞と考えます。

「にて」の前が「原因・理由」を示すこともあります。

まれに「体言」が省略され、「活用語の連体形」+「にて」になることもあります。

例文

光満ちて、清らにゐたる人あり。(竹取物語)

(訳)光が満ちて、輝くように美しい様子座っている人がいる。

(1)形容動詞ナリ活用の連用形の活用語尾+接続助詞「て」の用法です。

「○○に」の「○○」の部分が「状態・性質」であるときには、「○○に」でまるごと一つの形容動詞と考えましょう。

菅原の大臣、右大臣の位おはします。(大鏡)

(訳)菅原の大臣は、右大臣の位いらっしゃる。

(2)「体言」+断定の助動詞「なり」の連用形+接続助詞「て」の用法です。

「おはします」は、敬意を外せば「あり」になります。

潮海のほとりにてあざれあへり。(土佐日記)

(訳)潮海のほとりふざけあっている。

(3)格助詞です。

ここでは「場所」を示しています。

「にて」の直前が、「場所」「時」「手段」「原因・理由」を示す体言である場合、「にて」は格助詞と考えましょう。

深き川を舟にて渡る。(更級日記)

(訳)深い川を舟渡る。

(3)格助詞です。

ここでは「手段」を示しています。