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たちわかれ いなばのやまの みねにおふる まつとしきかば いまかへりこむ
和歌 (百人一首16)
たち別れ いなばの山の 峰に生ふる まつとし聞かば 今帰り来む
中納言行平 『古今和歌集』
歌意
あなたがたとお別れして因幡国に行っても、その国の稲羽山(稲葉山)の峰に生える松ではないけれど、あなたがたが「待つ」と聞こえてきたら、すぐに帰って来よう。
作者
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作者は「中納言行平」です。「在原業平」の異母兄である「在原行平」のことです。
平城天皇の皇子である阿保親王の子です。臣籍降下し、業平とともに「在原朝臣」の姓をたまわりました。
文徳天皇の時代に、因幡守(いまの島根県の国司)に任じられました。この歌は、任地に向かう際に詠んだものでしょうね。
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なんかの琴をつくった人だっけ?
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行平は、因幡から帰京したのち、何かの理由で須磨に流されていたんですよね。
その際、さびしさを紛らわすために、浜辺に流れ着いた木片に絃を張って、一絃琴を作ったと言われています。諸説ありますが、「須磨琴」と呼ばれる琴の起源だと言われていますね。
いまは「須磨寺(福祥寺)」に須磨琴保存会があります。
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す、須磨寺って、あの……
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熊谷直実が斬った敦盛の首を洗い清めたとされる池があります。
直実が作成したと言われる敦盛像もあります。
敦盛が持っていたとされる青葉の笛と高麗笛もあります。
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そいつはすごい。
ポイント
たち別れ
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行平は855年に因幡国守になっておりまして、その出発に際しての「別れ」だと解釈します。
いなばの山の
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因幡の国庁近くにある「稲羽山(稲葉山)」を指します。
「往なば」の意味と「掛詞」になっています。
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「因幡国へ行ってしまうならば」ということだな。
峰に生ふる
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「峰」は山頂のほうですね。
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山頂のほうに「松」が生えているっていうことは、それほど高い山ではないんだろうね。
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標高249mだそうです。
まつとし聞かば
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上からの文脈では「松」を意味していて、下への文脈では「待つ」を意味しています。
「松」と「待つ」の「掛詞」ですね。
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俺が赴任する因幡の国の山に「松」が生えているんだよね、まあ、その「松」ってわけじゃないけれど、きみらが「待つ」って言うのが聞こえてきたら、俺すぐに帰ってきちゃうよ。
っていう感じの歌なんだね。
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まさにそんな感じです。
会社でたとえれば、遠隔地に赴任する部長さんが「お別れの会」でする挨拶みたいなものですね。
今帰り来む
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「今」はいろいろな意味がありますが、文脈から考えると「今すぐ」くらいの訳がいいですね。
「む」は、「意志」の助動詞「む」の終止形です。
「すぐに帰って来よう」などと訳します。