他者に比べて自分が「劣」
意味
(1)気が引ける・気づまりだ・気後れする
(2)(こちらの気が引けるほど)立派だ・優れている
ポイント
「他者と比較して自分が劣っていると感じる気持ち」を意味します。
ここでいう「他者」というのは、「目の前にいる相手」のこともあれば、「世間一般の人」の場合もあります。
自分(や身内)のふるまいなどが、「世間一般の水準と比べて劣っている」「その場にいる他の人と比べて劣っている」などと感じる場合には、(1)の意味で訳します。
一方、「優れている他者」のほう形容することもあり、その場合は、(2)の意味になります。
(1)の意味は現在と似ているね。
そうですね。
ただ、現在は「ミスをしちゃって恥ずかしい」というように、自分自身の失敗に使うことも多いかと思いますが、古語では「他者と比べて劣っていて恥ずかしい」という意味合いになります。
そのように「他者ありき」の語であるので、「他者そのもの」のことを言う場合には「すぐれていること」を形容していることになります。
(2)の意味は現在にありませんので、試験では(2)のほうが問われやすいですね。
例文
「深く、さ、いらへたまへば、いとぞかしこきや」と、これもいと恥づかしとおぼしたり。(堤中納言物語)
(訳)「(姫は)深く、そのように(悟った者のように)返答なさるので、たいそう恐れ入ることよ」と、(親たちは)これ【姫の考え方】も(世間一般に対して)たいそう気が引けるとお思いになった。
はづかしき人の、歌の本末問ひたるに、ふとおぼえたる、我ながらうれし。(枕草子)
(訳)こちらが気恥ずかしくなるほど立派な方が、歌の上の句と下の句をたずねたときに、ふと思い出したのは、我ながらうれしい。