抵抗力!
意味
(1)耐える・我慢する・もちこたえる
(2)能力がある・すぐれる
ポイント
もともとは「手+合ふ=たあふ」⇒「たふ」だと言われていて、逆境や困難に対して身体的に抵抗するという意味合いでした。
そのことから、同じ意味をもつ「耐」「堪」を「たふ」と訓じたのでしょうね。「耐ふ」「堪ふ」という漢字のとおり、「耐える・堪える」という意味になります。これは現代語でも同じです。
問題として問われやすいのは(2)のほうの意味で、「逆境に耐え抜くだけの十分な能力がある」ということから、「すぐれている」などと訳すことがあります。
「がまんする」と「すぐれている」だと、ぜんぜん意味が違うから、訳するときに困るな。
けっこう前後の文脈でなんとかなります。
〇〇にたふ
〇〇にたへたり
などとなることが多いのですが、「〇〇に」の部分が、「逆境そのもの」であれば、「がまんする」「もちこたえる」などと訳します。
「〇〇に」の部分が、「能力を発揮する分野」であれば、「能力がある」「すぐれている」などと訳します。
また、「~たへる人」「~たへたる人」のように、人間存在を示す体言に係っていく場合は、「能力がある人」「すぐれている人」というように訳すことが多いですね。
ああ~。
たしかに、
「人、風雨にたふ」だと、「人が風雨に耐える(がまんする)」という意味だろうけど、「風雨にたへる人」だと、「風雨にもちこたえる能力がある人」って感じがするな。
そうですね。
たへる花
たへたる馬
などように、「人」でない可能性もありますので、原則的には前後の文脈で考えていきましょう。
あと、「たへる」とか言われると、「絶える」とか「途切れる」と訳したくなってしまう。
「絶える」「途切れる」と訳す古語は「絶ゆ(たゆ)」です。
これは「ヤ行下二段活用」なので、「へ」にはなりません。「やいゆえよ」で活用します。
「たえず」「たえたり」「たえるとき」「たゆべし」などとなっていたら「たゆ」のほうですね。
「たへず」「たへたり」「たへるとき」「たふべし」などとなっていたら「たふ」のほうです。
こういうところで文法がきいてくるのか。
例文
作文の舟、管絃の舟、和歌の舟と分かたせたまひて、その道にたへたる人々を乗せさせたまひしに、(大鏡)
(訳)漢詩の舟、管絃の舟、和歌の舟とお分けになって、その道にすぐれている人々をお乗せになったが、
今はさやうのことにたへたる人なくて、口惜しう思しめしけり。(栄花物語)
(訳)今はそのような(序文を書く)ことに能力をもっている人がいなくて、(天皇は)残念にお思いになった。
ここでの「さやうのこと」は、「勅撰集の序文を書くこと」です。