〇和歌

〇和歌

吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を 嵐といふらむ (文屋康秀)

吹くとすぐ、秋の草木がしおれるので、なるほどそれで山風を「嵐」と言うのであろう。
〇和歌

今来むと 言ひしばかりに 長月の 有明の月を 待ち出でつるかな (素性法師)

今すぐ来ようと、(あなたが)言ったばかりに、陰暦九月の夜長を待つうちに、有明の月が出てきてしまったよ。【有明の月が出るのを待ってしまったよ】
〇和歌

わびぬれば 今はた同じ 難波なる みをつくしても 逢はむとぞ思ふ (元良親王)

(二人の仲が知られてしまい)悩み苦しんでしまったので、今となっては(何があっても)もう同じことだ。難波にある澪標(みおつくし)ではないが、身を尽くしても【わが身が果てても】逢おうと思う。
〇和歌

難波潟 みじかき芦の ふしの間も 逢はでこの世を 過ぐしてよとや (伊勢)

難波潟の芦の、短い節と節の間のように短い時間も、(私とあなたが)逢わないでこの世を過ごしてしまえと、あなたは言うのだろうか。
〇和歌

住の江の 岸による波 よるさへや 夢の通ひ路 人めよくらむ (藤原敏行朝臣)

住の江の岸に寄る波の「よる」ではないが、夜までも夢の通い路をあなたが通って来ないのは【私たちが逢えないのは】、あなたが人目を避けているからだろうか。
〇和歌

ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは (在原業平朝臣)

不思議なことが多かった神代の昔にも、これほどのことは聞いたことがない。竜田川に、紅葉したもみじが敷かれ、水面をくくり染めにしているとは。
〇和歌

たち別れ いなばの山の 峰に生ふる まつとし聞かば 今帰り来む (中納言行平)

あなたがたとお別れして因幡国に行っても、その国の稲羽山(稲葉山)の峰に生える松ではないけれど、あなたがたが「待つ」と聞こえてきたら、すぐに帰って来よう。
〇和歌

君がため 春の野に出でて 若菜摘む 我が衣手に 雪は降りつつ (光孝天皇)

あなたのために、春の野に出かけて若菜を摘む私の袖に、雪はしきりに降りかかっている。
〇和歌

陸奥の しのぶもぢずり たれゆゑに 乱れそめにし 我ならなくに (河原左大臣)

陸奥の織物である「しのぶもじずり」が乱れ模様に染まるように、いったい誰のせいで私の心は乱れ始めてしまったのか。私のせいではないのに。(あなたのせいなのに。)
〇和歌

筑波嶺の 峰より落つる 男女川 恋ぞつもりて 淵となりぬる (陽成院)

筑波嶺の峰から落ちる男女川のように、私の恋心も積もり積もって、淵となってしまった。
タイトルとURLをコピーしました