
〇和歌


わびぬれば 今はた同じ 難波なる みをつくしても 逢はむとぞ思ふ (元良親王)

難波潟 みじかき芦の ふしの間も 逢はでこの世を 過ぐしてよとや (伊勢)

住の江の 岸による波 よるさへや 夢の通ひ路 人めよくらむ (藤原敏行朝臣)

ちはやぶる 神代も聞かず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは (在原業平朝臣)

たち別れ いなばの山の 峰に生ふる まつとし聞かば 今帰り来む (中納言行平)

君がため 春の野に出でて 若菜摘む 我が衣手に 雪は降りつつ (光孝天皇)

陸奥の しのぶもぢずり たれゆゑに 乱れそめにし 我ならなくに (河原左大臣)

筑波嶺の 峰より落つる 男女川 恋ぞつもりて 淵となりぬる (陽成院)
