いぶかし【訝し】 形容詞(シク活用)

(気がかりゆえに)知りたい・・・

意味

(1)(はっきりしなくて)気がかりだ

(2)見たい・聞きたい・知りたい

(3)不審だ・疑わしい

ポイント

「いぶ」ということばに「はれない(はっきりしない)」という意味合いがありまして、「いぶし」は、それを「気がかり」に思う心情面のことばとして使用されます。

「気がかり」であるがゆえに、その内容を確認したい心情として「見たい・聞きたい・知りたい」などと訳すこともあります。

また、「疑い」の気持ちが強ければ「不審だ」などと訳します。

「見たい・聞きたい・知りたい」って、「ゆかし」も同じように訳すよね。

はい。

「ゆかし」も同じように訳します。ただ、「ゆかし」が「好奇心」であることに対して、「いぶかし」は「猜疑心」といえますので、「知りたい」と思う動機や背景がけっこう違います。

なるほど~。

あと、「いぶせし」っていう似たようなことばもあったよね。

はい。

同じ「いぶ」を構成要素にもつ形容詞に「いぶせし」があります。

「いぶせし」は、一説には「いぶ」+「狭し(せし)」とされまして、それで考えると「はれずにふさがっている」という状態を示しています。

その一方、「いぶかし」のほうは、「はっきりせずにようすがわからない」ものに対して「気がかりだ・不審だ・知りたい」と思うような心情面のことばとされます。

よく「ク活用」「状態」で、「シク活用」「心情」とか言うもんね。

もともとはその傾向があります。

ただ、「ク活用」の形容詞も、使用されていくうちに「その状態」に対する「心情」を示す場面も増えていきますので、結果的に「状態も心情も意味する」というものがけっこうありますね。

例文

つとめて、いぶかしけれど、わが人をやるべきにしあらねば、(伊勢物語)

(訳)翌朝、(帰って行った女のことが)気がかりだが、(男は)自分の使者を行かせるわけにもいかないので、

横笛の五の穴は、いささかいぶかしき所の侍るかと、(徒然草)

(訳)横笛の五番目の穴は、少々不審なところがございますがと、

京の方のこととおぼせば、いぶかしうて、(源氏物語)

(訳)都のほうのうわさとお思いになると、(そのことを)知りたくて、