さあねえ
意味
感動詞
(1)さあ・さあねえ
(2)いや・でも
副詞
(3)さあどうだか(~ない) *多く、打消表現を伴う
(4)さあどうだかわからない *「知らず」を補って訳す場合がある
ポイント
「いさ」は、「いさかひ」の「いさ」と同根であり、相手の発言に対してやや抵抗するような、「わからない」「すんなりは同意しない」「そうではない」といった意志を示すときのことばです。
「いさ知らず」というように、「知らず」を伴う表現も多く、その場合は「知らず」を修飾することになるため、「副詞」に分類されます。
「不知」という漢字を「イサ」と読んでいる例もありまして、「わからない」という意味がそもそも内包されているようなことばだと言えます。
いまでも「彼のように有能な人ならいざ知らず、私なんかにはできっこない」とか使うよね。
使いますね!
古文では「いさ知らず」であり、濁りません。
古文での「いざ」という語は「行動するときの掛け声」みたいなものであり、別の語です。
ただ、「いさ」が次第に濁音化していったため、混同されることも多かったようです。
例文
「何の名ぞ、落窪は」といへば、女いみじく恥づかしくて、「いさ」といらふ。(落窪物語)
(訳)(少将が)「何の名前なのか、落窪とは」と言うと、女はたいそう恥ずかしくて、「さあ【さあねえ】」と答える。
人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほひける (古今和歌集)
(訳)人はさあどうだか、心の中はわからない。(しかし)郷里は、(梅の)花が昔の香りで色づいている。
「いさ」が独立しているわけではなく、「知らず」を修飾するかたちで、「さあどうだか⇒わからない」という構造になっているので、「副詞」として取り扱います。
人はいさ 我はなき名の 惜しければ 昔も今も 知らずとは言はむ (古今和歌集)
(訳)人はさあどうだかわからない。(しかし)私は(事実では)ないうわさが(立つと)残念なので、昔も今も(あなたのことを)知らないと言おう。
ここには「知らず」という表現はありませんが、あるものとみなして、省略を補うようなかたちで「さあどうだかわからない」と訳したほうが文脈に沿います。
「いさ」にはこのように、「知らず」の意味も含みこんでいるような場合があります。
特例的ですが「副詞」として扱います。