
神仏による何かのきざし
意味
(1)徴候・兆し 【徴】
(2)ご利益・霊験 【験】
(3)効果・効き目 【験】
(4)目じるし・標識 【印・標】
(5)証拠・あかし 【証】
ポイント

「知る」「記す・徴す」と同根のことばです。一説には「白」とも関係するといわれます。
何らかのかたちで明白に認識できること(もの)を示す語であり、根本的には「徴候」「兆し」といった意味になります。

ほとんどの意味は、現代語の「しるし」と同じだもんね。

そうですね。
ただ、古文の世界観でいうと、何らかの「きざし」が現れること自体が、自然や神仏の霊的な力がはたらいた結果だといえます。
その点で、「神仏の影響が表出されたもの」という意味合いで、(2)「ご利益」「霊験」、(3)「効果」「効き目」などと訳す場合があります。なお、その場合は「験」の字を当てます。
試験問題としてはこの(2)(3)の意味を問うことが多いですね。

形容詞にも「しるし」ってあったよね。

形容詞「しるし(著し)」は、徴候が明白に表れている様子を示すことばで、名詞「しるし」と同根のことばになります。
例文
かの鬼の空言は、このしるしを示すなりけり。(徒然草)
(訳)あの鬼のうそ【鬼が現れたという空言】は、この【病が流行する】前兆【兆し】を示すのであった。
さまざまの御祈りはじまりて、なべてならぬ法ども行はるれど、さらにそのしるしなし。(方丈記)
(訳)いろいろなご祈祷が始まって、格別な法【祈禱や修法】などが行われたが、まったくその効き目がない。
必ず仏の御しるしを見むと思ひ立ちて、その暁に京を出づるに、(更級日記)
(訳)必ず仏のご利益を受けようと思い立って、その日の夜明け前に都を出発するが、
人つく牛をば角を切り、人くふ馬をば耳を切りて、そのしるしとす。(徒然草)
(訳)人を突く牛は角を切り、人に食いつく馬は耳を切って、その目じるしとする。