かたみに隔てなく物語しけるついでに (落窪物語)

〈問〉次の傍線部を現代語訳せよ。

かかるほどに、蔵人の少将の御方なる小帯刀とて、いとされたる者、このあこきに文通はして、年経て、いみじう思ひて住む。かたみに隔てなく物語しけるついでに、このわが君の御事を語りて、北の方の御心のあやしうて、あはれにて住ませたてまつりたまふこと、さるは、御心ばへ、御かたちのおはしますやうなど語る。うち泣きつつ、「いかで思ふやうならむ人に盗ませたてまつらむ」と、明け暮れ「あたらもの」と言ひ思ふ。

落窪物語

現代語訳

こうしているうちに、蔵人の少将のご家来である小帯刀といって、たいそう気の利いた者が、この阿漕に手紙を送って、年を経て、並々でなく思って結婚する。(帯刀と阿漕は)たがいにうちとけて話をする機会に、この自分の仕える姫君のご様子を語って、北の方のお心がおかしくて、かわいそうな状態で住ませ申し上げなさること、そうではあるが、(姫君の)お心遣いや、ご容貌が(すばらしくて)いらっしゃる様子などを語る。泣きながら、(二人は)「なんとかして思い描くような人に(姫君を)盗ませ申し上げたい」と、朝晩、「ああ惜しいものよ」と言いもし、思いもする。

ポイント

かたみに 副詞

「かたみに」は、副詞です。「たがいに」「かわるがわる」などと訳します。

もともとは「片身に」です。

「片方」が、「もう片方に」対して何かをする様子です。

古文の文中では、「互いに」と訳すことがほとんどですね。

ついで 名詞

「ついで」は名詞です。「順序」「機会」のどちらかで訳しましょう。

「序」と書いて「ついで」と読みます。

文字通り、「順番」を意味するのですが、「ある出来事」が起きた際に、次の行動を起こす「タイミング」の意味にも用います。

その場合、「機会」「折」などと訳すほうがいいですね。

この例文でも「機会」「折」と訳すほうが適切です。