とくきこしめさせばや (枕草子)

(問)次の傍線部を現代語訳せよ。

「いとあさましうねたかりけるわざかな。誰がしたるにかあらむ。仁和寺の僧正のにや」と思へど、「よもかかることのたまはじ。藤大納言ぞ、かの院の別当におはせしかば、そのし給へることなめり。これを、上の御前、宮などに、とくきこしめさせばや」と思ふに、

現代語訳

「とても驚きあきれて憎らしい行いだなあ。誰がしたことであろうか。仁和寺の僧正がしたことであろうか【仁和寺の僧正の筆跡であろうか】」と思うが、「(仁和寺の僧正は)まさかそんなことはおっしゃるまい。藤大納言だ、あの院【円融院】の別当でいらっしゃったので、その人がしなさったことであるようだ。これを、上の御前【一条天皇】、宮【中宮定子】などに(対して)、早くお聞かせしたいものだ」と思うので、

ポイント

とく 副詞

「とく」は、副詞です。「早く・すぐに・さっそく」という意味です。

形容詞「疾し」の連用形が副詞化したものです。

この場面では、「こんな憎たらしい立文が届いた」ということを、すぐに上【一条天皇】と宮【中宮定子】に伝えたいのですね。

きこしめす 動詞(サ行四段活用)

「きこしめさ」は、敬語動詞「聞こし召す」の未然形です。

尊敬語「聞こす」に、尊敬語「召す」がついたものであり、かなりの上位層に用いる尊敬語です。

意味は、

① お聞きになる
② お治めになる
③ お食べになる

などですが、ほとんどの場合①です。

す 助動詞

「せ」は、助動詞「す」の未然形です。

「使役」の助動詞「す」です。

「聞こし召す」が「お聞きになる」という意味なので、「使役」の「す」をつけると、「お聞きになるという状態にさせる」ということになります。

「お聞きにならせる」という日本語がなじまないので、「お耳に入れる」などと訳しましょう。

ばや 終助詞

「ばや」は、終助詞です。

「自己の願望」にも、「他がこうであってほしいという願望」にも使用できる終助詞です。

ここでは「自己の願望」を示していると判断し、「~たい」と訳します。