かつ消え、かつ結びて、
意味
副詞として
(1)一方では
(2)すぐに・次々に・次から次へと
(3)ちょっと・わずかに・ほんの少し
接続詞として
(1)そのうえ・それに加えて・また *近世以降の用法
ポイント
二つのことが並行して行われることを意味します。
同時並行であれば(1)のように訳し、連鎖的に行われるのであれば(2)のように訳します。
いまでも数学とかで使うよね。
PとQの両方が成り立つというような場合に使うので、(1)の意味に近いですね。
(2)のように、「Aが起きて、すぐにBが起きる」とか、「次々にCが起きる」という使い方は、「ある一つの物事が起きている時間の短さ」を思わせるから、(3)のように「ちょっと」という意味にもなるのかな。
そうですね。
複数の物事が「同時的」あるいは「連鎖的」に起きるということは、その「ひとつひとつ」の程度や時間はたいしたものではないと言えます。
そのことから、「かつ」が、程度や時間の「少なさ」を示すこともあります。それが(3)の意味です。
例文
よどみに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。(方丈記)
(訳)淀み【流れのとどまっているところ】に浮かぶ水の泡は、一方では消え、一方では形をつくって、いつまでもそのままとどまっている例はない。
『方丈記』の冒頭のあたりの一節です。
この例文ごと覚えてしまうのがはやいですね。
かつ現るるをも顧みず、口に任せて言ひ散らすは、やがて浮きたること聞こゆ。(徒然草)
次から次へと(真実が)あらわになることを考えず、口から出まかせに(勝手なことを)言い散らすのは、すぐにあてにならない【いいかげんな】ことだとわかる。
心をぞ わりなきものと 思ひぬる かつ見る人や 恋しかるらむ (伊勢物語)
(訳)心を、わけがわからないものと思った。ちょっと【わずかに】会った人が、どうして(こんなに)恋しいのだろうか。
なほ、松島、塩釜の所々、絵に書き贈る。かつ、紺の染め緒付けたる草鞋二足、はなむけす。(奥の細道)
(訳)なお、(画家の加右衛門は)松島や、塩釜の所々を、絵に描いて贈ってくれる。そのうえ、紺の染布の緒を付けている草鞋を二足、餞別としてくれる。
この例文は接続詞としての用法です。