
want to
意味
(1)【動作の実現の希望】 ~たい(ものだ)
(2)【事態の実現の希望】 ~てほしい
ポイント

助動詞「む」のク語法未然形「まく」に、「欲し」がつき、「まくほし」となったものが、「まほし」になっていったと考えられています。
「む(まく)」によってイメージされている状態を「欲している」ことになりますので、「したい」「てほしい」という「希望」を表すことになります。

「たい」の意味にも、「てほしい」の意味にもなるんだな。

そうですね。
ただ、(2)のケースは、「他者」の「行為」を「要求」しているのではなく、「存在そのもの」や「存在の仕方」を希望する場合の使い方になります。
たとえば、「先達はあらまほし(存在してほしい)」とか「(花が)匂はまほし(香ってほしい)」といったケースですね。
したがって、(2)の使い方は、たいていは「あらまほし」という表現ですね。

「あらまほし」って形容詞もなかったっけ?

もとは、「~にあってほしい」ということなのですが、「こうあってほしいと思えるほどの○○」というように、「ほめことば」として使われることがありまして、それは一語の形容詞として考えます。
たとえば、美しい花を見て、「あらまほしき花」などという場合、「こうあってほしいと思えるほどの花」ということなのですね。その場合、「理想的だ」「望ましい」などと訳します。
例文
紫のゆかりを見て、続きの見まほしく覚ゆれど、(更級日記)
(訳)(源氏物語の)紫の上にまつわるところを読んで、その続きが読みたいと思われるが、
言はまほしきこともえ言はず、せまほしきこともえせずなどあるが、わびしうもあるかな。(更級日記)
(訳)言いたいことも言えず、したいこともできない、など(ということが)あるのが、つらいことでもあるよ。

これらのように、「まほし」は「動作主の希望」を表すことが多いですね。
少しのことにも、先達はあらまほしきことなり。(徒然草)
(訳)ちょっとしたことでも、先導役はいてほしいものである。

「自分の行為」に使用してない場合は、このように、「(存在そのものが)あってほしい」「(存在の仕方が)こうであってほしい」というケースで用いられます。
花といはばかくこそ匂はまほしけれな。(源氏物語)
(訳)花と言うのならば、このように香ってほしいものだな。

これも「存在の仕方(こうであってほしい)」を希望しているのですね。
世の人の飢ゑず、寒からぬやうに、世をば行はまほしきなり。(徒然草)
(訳)世の中の人が飢えず、寒くないように、世の政治を行ってほしいものである。

これは「行ふ」という「行為」についていますが、「世を行ふ」というのは「政治をする」ということです。
つまり、「ひとつの具体的な行為」を意味しているのではなく、「為政者はこうであってほしい」というニュアンスで用いているのですね。