見ることのやうにかたりなせば、皆同じく笑ひののしる、いとらうがはし。(徒然草)

〈問〉次の傍線部を現代語訳せよ。

よからぬ人は、誰ともなく、あまたの中にうち出でて、見ることのやうにかたりなせば、皆同じく笑ひののしる、いとらうがはし。をかしきことを言ひてもいたく興ぜぬと、興なきことを言ひてもよく笑ふにぞ、品のほど計られぬべき。人のみざまのよしあし、才ある人はその事など定めあへるに、己が身をひきかけて言ひ出でたる、いとわびし。

徒然草

現代語訳

教養のない人は、誰ということもなく、大勢の人の中に出てきて、見ることのようにことさら話すので、皆同じように大騒ぎして笑うのが、たいそう騒々しい。おもしろいことを言ってもあまりおもしろがらないのと、おもしろくないことを言ってもよく笑うことによって、品位の程度をきっと推し測れるだろう。人の容姿の良し悪しについて、才能がある人は、その事などを議論し合っているのに、(教養のない人は)自分の身をひきあいに出して話し出しているのは、たいそう困る。

ポイント

なす 動詞(サ行四段活用)

「なせ」は、動詞「為す(成す)」の已然形です。

「する」「行う」「作る」などの意味になりますが、補助動詞として用いた場合、「意図的にその行為をする」という意味合いになります。

そのため、「わざと~する」「ことさら~する」という訳になります。

「かたりなせば」は、已然形+「ば」の用法になっているので、順接確定条件となります。

「わざと語ると」「ことさら語るので」などと訳しましょう。

ののしる 動詞(ラ行四段活用)

「ののしる」は、「大声で騒ぐ」という意味の動詞ですが、他の動詞に補助的につくと、「大騒ぎして~する」「大声を立てて~する」と訳します。

らうがはし 形容詞(シク活用)

「らうがはし」は、「乱雑だ」「騒がしい」という意味の形容詞です。「らう」は「乱」の字であり、乱れていてやかましい様子を表しています。

もとは「らんがはし」でしたが、「ん」がなかった時代に「う」を充てていたことから、「らうがはし」となっていったのだと考えられます。

なお、「みだりがはし」という形容詞もありまして、同じ意味になります。