意味
① 近寄っていたい・離れたくない・手放したくない
② 心ひかれる・親しみやすい・魅力的だ
③ (昔が)なつかしい
ポイント
動詞「なつく」が形容詞化したものです。
基本的には目の前にあるものに対して「近くにいたい」という心情を表す言葉です。
そのことから、「親しみやすい」「魅力的だ」といった意味でも使われるようになりました。
かつてあったことを懐かしむ③の意味は、中世に入ってからの用法であり、現代語と同じなので、古文の問題の場合は、①②の訳し方になりますね。
たしかに、③の「昔が懐かしい」って意味は今と同じだから、古文の問題で問う価値はないよね。
現代語の「懐かしい」というニュアンスに引きずられるのではなく、「犬や猫が飼い主になつく」とか、「後輩が先輩になつく」といったイメージでとらえておいたほうがいいですね。
その「近寄っていたい」という心情そのものや、「(近寄っていたいほど)親しみやすい・魅力的だ」といった様子を示すのが古語の「なつかし」です。
例文
御心ばへいとなつかしう、おいらかにおはしまして、世の人いみじう恋ひ申すめり。(大鏡)
(訳)(三条院は)お気立てがたいそう親しみやすく、おっとりしていらっしゃって、世間の人は並々でなくお慕い申し上げているようだ。
咲く花の色めづらしく 百鳥の声なつかしく ありが欲し 住みよき里の荒るらく惜しも (万葉集)
(訳)咲く花の色は美しく、たくさんの鳥の鳴き声も心ひかれ、(いつまでも)こうであって欲しい住み心地のよい里が荒れていくのが残念だ。