おぼえ【覚え】 名詞

思われること、または自然な思い

意味

(1)評判 *多くは「よい評判」のこと

(2)寵愛(を受けること) *多くは「御おぼえ」の形

(3)感じ・趣き

(4)記憶・心当たり

(5)自信

ポイント

動詞「おぼゆ」が名詞化したものです。

「おぼゆ」は、「思ふ」+上代の助動詞「ゆ」であり、「ゆ」は「自発」や「受身」を意味します。

(1)(2)は、受身的なニュアンスですね。(1)「世間から思われること」であり、(2)は「非常に高い身分の人から思われること」を意味します。

(3)(4)(5)は、自発的なニュアンスですね。(5)は、能力や腕前などの話題において「おぼえあり」などと言う場合の訳し方です。

ああ~。

いまでも「腕におぼえあり」とか言うもんね。

例文

小式部、これより、歌よみの世に覚え出できにけり。(十訓抄)

(訳)小式部内侍は、このことから、歌人の世界での(よい)評判が立ってきた。

右大臣の覚えことのほかにおはしましたるに、(大鏡)

(訳)右大臣の寵愛(を受けること)は格別でいらしゃったので、

遅き梅は桜に咲き合ひて覚え劣り、(徒然草)

(訳)遅咲きの梅は桜の花といっしょに咲いて趣き(感じ)が劣り、

おぼえある力、異人よりはすぐれ、(宇治拾遺物語)

(訳)自信のある腕力は、他人よりはまさって、