今さら言っても・・・
意味
(1)言うまでもない・もちろんだ
(2)今さら言うのもおかしい
ポイント
本来は「言へばさらなり」「言ふもさらなり」のかたちで使用される表現で、「言うのも今さらなことである」という意味になります。つまり、「言うまでもない」ということですね。
その表現から、「言へば」「言ふも」という部分が落ちてしまったのが「さらなり」です。
「さらなり」とだけ表現されていても、「言へば」「言ふも」があるとみなして、「言うまでもない」と訳すことになります。
けっこう特殊な訳し方をすることばと思うんだけど、連用形の「さらに」っていう表現が文中にあったら、現代語と似たような感じで、「そのうえ」「ますます」っていう意味で使うよね。
「言うまでもない」という意味の「さらなり」は、
連用形「さらなり」
終止形「さらなり」
連体形「さらなる」
でしか用いられないと考えて大丈夫です。
いま話題に出た「さらに」というかたちは、活用表としては、「さらなり」の連用形に存在するのですが、「言うまでもない」という意味で「さらに」を用いることはありません。
「さらに」という表現は、「副詞」として理解してしまったほうが合理的だと思います。
「さらなり」と「さらなる」のときだけ、「言うのもいまさらだ ⇒ 言うまでもない」という意味で考えればいいんだな。
例文
面つき、まみの薫れるほどなど言へばさらなり。(源氏物語)
(訳)(姫君の)顔つきや、目もとのつやめいて美しいようすなどは言うのもいまさらである(ほどすばらしい)。
「言へば」がちゃんと書かれているパターンですね。
この「言へば」がなかったとしても、「言うまでもない」「言うのもいまさらだ」などと訳しましょう。
夏は夜。月のころはさらなり、闇もなほ、蛍の多く飛び違ひたる。(枕草子)
(訳)夏は夜(がよい)。月の(出ている)ころは言うまでもない、闇もやはり、蛍が多く飛び交っている(のがよい)。
「言へば」あるいは「言ふも」が省かれていますが、現代語訳としては「言う」の意味を含んで訳しましょう。