みじたく・かざりつけ
意味
装束
(1)衣服・服装
(2)支度・用意
(3)装飾・飾り
装束す・装束く
(1)衣服を身に着ける・衣服を着る・着飾る
(2)支度をする・用意をする
(3)飾り付ける・装飾を施す
ポイント
漢語「装束(サウゾク・シャウゾク)」です。
貴族の服装は中国にならったものでして、その「人前に出るきちんとした服装」のことを「装束」といいました。
着る物のことを「装束」と呼んでいたんだね。
現代風に言うと、「社会人として人前に出るときの格好」が「装束」です。
たとえば「ジャケット」「ワイシャツ」あたりは「装束」ですが、「インナー」は人目にふれませんので、「装束」とまではいえません。
じゃあ、インナーは装束ではないんだな。
中古では「袿(うちき)」という部屋着みたいなやつがありまして、人前に出るときにはこれの上に何かを着ます。「袿」は「装束」とは別のものです。
なお、身分や地位などによって装束は異なりますので、その人がどういった立場の人であるのかも、装束でだいたい判断できました。
ああ~。
結婚式にまねかれたときには、新郎新婦よりも目立つ服装はしないとか、そういうやつだな。
ちょっと違いますけど、ドレスコードという点では似たような感覚ではあります。
また、衣服だけでなく、「アクセサリー」や「(人を招く)部屋のインテリア」や「(どこかへいく)牛車の飾り付け」なども「装束」と呼ぶことがあります。
たとえば牛車で宮中に向かう時などは、ふさわしい装束を車にほどこす必要がありました。
現代風にいうなら、社長が青のポルシェで出勤するなら、部長は赤のベンツで、課長は黄色のフォルクスワーゲンで、係長は白の軽自動車とか、そんな感じかな。
ああ~。
それまで厳密なものではなかったと思いますが、とにかく「その場にふさわしい社会的な身なり」を、牛車の装飾などにまで求められたわけですね。
サ変動詞「す」をつけて「装束す」というかたちで複合動詞として用いられることも多いです。
また、「さうぞく」を「カ変動詞」として扱って、「さうぞき、~」とか、「さうぞかせたまひて」などと表現することもありました。動詞「さうぞく」は、晴れやかな飾りつけや、特別なおしゃれに使われることが多かったようですね。
例文
着たる装束をみな解きて、片端よりみなたたみて、(今昔物語集)
(訳)着ている衣服をみな脱いで、片端から全部たたんで、
よく装束したる数珠かいまさぐりて、手まさぐりにして、こなたかなた打ち見やりなどして、(枕草子)
(訳)よく飾り付けをした【装飾をした】数珠をもてあそんで、手慰みにして、あちらこちらを見やったりして、
「装束」+サ変動詞「す」というセットで、一語の動詞(複合語)と考えてもOKです。
裳・唐衣など、ことごとしくさうぞきたるもあり。(枕草子)
(訳)裳や唐衣などを、おおげさに着飾っている人もいる。
「装束く(さうぞく)」という「カ変動詞」の用い方です。
サ変動詞「さうぞくす」は、「衣服を着る」「支度をする」「装飾する」ということを全般的に意味しますが、カ変動詞「さうぞく」は、何らかのイベントの際のとりわけがんばったおしゃれなどに用いることが多いです。