しどけなし 形容詞(ク活用)

無秩序

意味

(1)だらしがない・雑然としている

(2)うちとけている・無造作だ

ポイント

「しどろなり(乱れている)」と同根のことばで、「しど」が、「無秩序で雑然としている様子」を意味しています。

「け」は「気」であり、「様子」「見た目」を示しており、「なし」は「なんとも〜である」という意味の接尾語です。

つまり、「まさに秩序がない様子」という意味合いになります。

たしかに、「くつろいでいる」ときっていうのは、「ビシッとしっかりしている」状態とは逆だからな。

「しどろなり」は、「しどろもどろ」のもとになったと言われていますね。

ああ~。

たとえば「話し方」が「しどろもどろ」だといったら、「話し方が秩序だっていなくて【論理だっていなくて】、何が言いたいのかわからない」ってことだもんな。

そうですね。

だいたい、人がくつろいでいるときというのも、周りに漫画本とかが散乱していたり、みかんの皮とかがそのまま残っていたり、たいてい「無秩序とセット」ですよね。

「しどけなし」という形容詞は、「無秩序・雑然」を意味しますけれども、そのくらい「くつろいでいる」「打ち解けている」という意味で使うことも多いので、そちらの訳に注意しておきましょう。

「しどけなし」を肯定的な文脈で使用しているのであれば、②の意味で訳しておきましょう。

例文

こまやかなる御直衣、帯しどけなくうち乱れ給へる御さまにて、(源氏物語)

(訳)色の濃い御直衣【普段のお着物】に、帯も無造作にゆったりとくつろぎなさっているご様子で、

一度にあらず、たびたびしどけなきことあれば、重く戒めんとて、召すなりけり。(宇治拾遺物語)

(訳)(大隅国の官は、)一度でなく、何度もだらしない行いがあるので、重く罰しようとして、お呼びになるのであった。