すごし【凄し】 形容詞(ク活用)

ゾワッと・・・

意味

(1)ぞっとするほど気味が悪い・恐ろしい

(2)ひどく寂しい・もの寂しい

(3)荒涼としている・寒々としている・冷ややかだ

(4)ぞっとするほどすばらしい

ポイント

ぞっとするような感覚をもたらす状況を意味します。

「酢」の「気」が「濃」ということから、「すけこし」⇒「すごし」となったという説がありまして、その説にしたがえば、刺激の強いものにふれて「なんだこりゃ!?」という感じでゾワッとするようなイメージです。

古文の世界だと、普通の人がいなさそうな殺風景な場所とかは、お化けでも出そうでゾッとするから、「ひどく寂しい」「荒涼としている」という訳もするのかな。

そういうことでしょうね。

現代語の「すごい」とはぜんぜん違うんだね。

根本的には、鳥肌が立つような「ゾワッと」する状況を「すごし」と言いますので、用例として多くはありませんが、「鳥肌が立つほどすばらしい」ことを意味することもあります。それが(3)の意味ですね。

現代語の「すごい」は、この(4)の意味に近いと思います。

例文

あられ降り荒れて、すごき夜のさまなり。(源氏物語)

(訳)あられが降り荒れて、(ぞっとするほど)気味の悪い夜の様子である。

琴を少しかき鳴らしたまへるが、我ながらいとすごう聞こゆれば、(源氏物語)

(訳)(源氏は)琴を少し弾き鳴らしなさったが、自分でもたいそうもの寂しく聞こえたので、

御琴に打ち合はせたる拍子も、鼓を離れて調へとりたるかた、おどろおどろしからぬも、なまめかしく、すごうおもしろく、所柄はまして聞こえけり。(源氏物語)

(訳)(住吉神社での演奏は)お琴に打ち合わせている拍子も、太鼓を用いずに調子をとるやりかたが、仰々しくないのも、優雅で、ぞっとするほどすばらしく趣があり、場所柄(ゆえに)いっそう(すばらしく)聞こえた。