助動詞「たり」「り」 ―「ている」でも「た」でも訳せるなら「存続」で考える― 存続・完了

「たり」「り」の前に「き」「けり」「つ」「ぬ」を読んでおいてもらえるといっそう理解が深まると思います。

こちらをどうぞ。

き けり
つ ぬ

については知識を増やしたぞ。

では、「たり」「り」に進みましょう。

意味はほとんど同じですが、接続の仕方が異なります。

とりあえず、「たり」のほうがわかりやすいので、「たり」から見ていきます。

たり 

助動詞「たり」の活用です。

未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形
た ら/た り/た り/た る/た れ/た れ

直前の語は「連用形」になります。

意味は存続」「完了」です。

「たり」は、「てあり」がつまってできた助動詞です。

言ひてあり
咲きてあり

などが、

言ひたり
咲きたり

となっていきました。

そのため、「たり」の活用の仕方は動詞「あり」と同じです。

「接続助詞」の「て」の直前は「連用形」になりますから、「たり」の直前も「連用形」ということになります。

「つ」「ぬ」は「完了」の意味合いが強い助動詞でしたが、「たり」は構成要素に「あり」があることからも、「その状態が続いている」意味合いが強いです。

そのため、「存続」の意味になりやすい助動詞です。「~ている」「~てある」と訳します。

「~ている」「~てある」と訳せず、「~た」と訳すしかない場合は、「完了」と考えておきましょう。

あとは、「つ」「ぬ」と同じように、「~たり、~たり」と繰り返す用法は「並列」と考えてよい。

り 

では「り」を見ていきましょう。

「たり」よりも「り」のほうがちょっとやっかいです。

なにがやっかいなんだ?

接続が少々複雑です。

普通、「つ」の直前は「連用形」、「ぬ」の直前は「連用形」、「たり」の直前は「連用形」というように、接続がほぼ定まっているものですが、

助動詞「り」は、直前が、

 サ行変格活用動詞 の 未然形
 四段活用動詞 の 已然形(命令形)


となっています。

予想以上にややこしいぞ。

ひとまず、助動詞「り」の活用です。

未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形
 ら / り / り / る / れ / れ 

直前の語は「サ行変格活用の未然形」「四段活用動詞の已然形(命令形)」になります。

意味は「存続」「完了」です。

四段活用につく場合、已然形(命令形)につくってことは、

咲け

の「咲け」のところは、「已然形」「命令形」のどっちで答えればいいんだ。

これに関してはどちらで答えても正解です。

平安時代には四段活用の「已然形」と「命令形」は同じ音ですから、「り」の直前の四段動詞について、それが「已然形」なのか「命令形」なのかは決着できません。

ただ、それ以前の時代、たとえば万葉集の表記に照らすと、四段活用の「已然形」と「命令形」は音が異なっています。その時代、助動詞「り」は「命令形」のほうについていたので、原初的には「命令形接続」です。

じゃあ、「命令形」って決めちゃえばいいんじゃないの?

大昔の活用を見ると、たしかにそうなんですけど、平安時代には、四段活用の「已然形」と「命令形」の見た目上の違いはなくなるんですよね。

そうすると、「命令形に助動詞がつく状態」のほうを変だと考えて、むしろ「已然形」と決めたほうがいいという意見もあります。

なんと受験生泣かせなんだ。

身もふたもないことを言うと、「り」の直前はもともと「已然形」でも「命令形」でもないんですけどね。

どういうことだ?

「り」にかんしては、

四段動詞につく場合でいうと、もともとは「動詞の連用形」に「あり」がそのままくっついて、

咲きあり
降りあり

などと言っていたものが、

咲けり
降れり

と詰まっていったんですね。

このときの「り」だけを取り出して「存続・完了の助動詞」と見なしたわけなんです。

というわけで、

咲け り
降れ り

となっているときの、「咲け」「降れ」は、連語がつまって結果的にそうなっただけのかたちであって、もとは「已然形」や「命令形」に「り」がついたわけではないんですよ。

ただ、「り」を独立した助動詞と分類する以上、「○○形につく」という文法的ルールは設定しておく必要があるので、後出しで考えたわけです。

四段活用で語尾が「e」になるのは「已然形」か「命令形」なので、四段活用動詞に「り」が付く場合は「已然形」か「命令形」につく、という文法ルールが生まれました。

なるほどな。

サ変動詞につく場合も、やはり「動詞の連用形」に「あり」がそのままついて、

旅しあり
心地しあり

などと言っていたものが、

旅せり
心地せり

と詰まっていきました。

このときの「せ」というかたちは、連語がつまって結果的にそうなっただけのかたちなんですけれど、「サ行変格活用」の「せ」は「未然形」になりますから、「サ行変格活用」に「り」が付く場合は「未然形」につく、という文法ルールが生まれました。

つまってできた言い方の「せ」が、たまたま未然形と同じかたちであったというわけか。

「せ」も「e音」だな。

そうです。

ですから、「存続・完了」の助動詞「り」は、「e音」にしかつきません

サ変の未然形 と 四段の已然形(命令形) につくということで、

サ 未 四 已さみしい

とか

サ 未 四 命さみしめ

で覚えようとする受験生が多いですね。

学校の授業でも「サ未四已さみしい」で覚えるといいよという先生と、「サ未四命さみしめ」で覚えるといいよという先生がいます。同じ学校に混在していると迷惑ですよね。

ちらりと学校を批判したぞ。

試験で

あざりあへ

の「り」の直前の活用形を聞いてきて、「命令形」と答えると、×にしてくる謎の先生が実際にいますからね。

「どうして×なんですか?」と生徒が質問すると、「授業で已然形と教えたから」と言ってくるんですよ。

試験は「普遍的・一般的な正解」を導くものですから、「授業でこう教えたからこれだけが正解」とする理不尽な先生には、本家に伝わる伝統の呪

ちょっ、今日はここまでにしておこう!