はじめでもおわりでもどっちでもない!
意味
(1)中途半端だ・どっちつかずだ
(2)かえってしないほうがましだ
(3)かえって・むしろ・なまじっか *「なかなか」という副詞としての使い方
ポイント
「中」は、「中途」「中間」を表します。それを2つ重ねて強調することで、「はじめでも終わりでもない」という意味合いを持ちます。
「なかなかなり」は、その「どちらでもない状態」をマイナスの意味でとらえて、「中途半端だ」「どっちつかずだ」と訳すことになります。
ああ~。
現代語でも、「この試験にはなかなか合格しないぞ!」なんて言うよね。
中途半端には合格しないぞ!
なんていう意味ですね。
古語の場合は、「中途半端だ」「どっちつかずだ」という意味からからさらにふみこんで、「いっそしないほうがましだ」という心情を表す語としても使われます。それが②の意味です。
連用形「なかなかに」の形で用いられることが多く、平安時代には「に」が取れて「なかなか」という語として用いられるようになりました。そこまでいくと完全な「副詞」ですね。
副詞「なかなか」は、(2)のニュアンスで用いられることが多く、「かえって」「むしろ」などと訳します。
例文
なかなかに人とあらずは酒壺になりにてしかも酒に染みなむ (万葉集)
(訳)中途半端に(なまじっか)人間でいないで酒壺になってしまいたい。そうすれば酒に浸っているだろうよ。
なかなかなるもの思ひをぞし給ふ。(源氏物語)
(訳)かえってしないほうがよい(帝の寵愛がないほうがよい)というもの思いをしなさる。
髪のうつくしげにそがれたる末も、なかなか長きよりもこよなう今めかしきものかなとあはれに見たまふ。(源氏物語)
(訳)(尼の)髪がきれいに切りそろえられている端も、かえって長いよりも格別に現代風であるものだなあとしみじみ趣き深くご覧になる。
最後の例文は、「なかなかに」の「に」が取れて、完全に「副詞」として使用されているものですね。
「なかなか」という副詞として用言を修飾しているものを訳す場合には、「かえって」「むしろ」「なまじっか」などと訳しておけば大丈夫です。