あく【飽く】 動詞(カ行四段活用)

飽和状態

意味

(1)満足する・満ち足りる

(2)飽きる・うんざりする

ポイント

「飽」という字のとおり、「いっぱいになる」「十分になる」ということです。

それをプラスの意味でとらえれば、「満足する」ということであり、マイナスの意味でとらえれば「(十分になりすぎてしまって)うんざりする」ということになります。

心情的にはまったく逆で、やっかいな動詞だよね。

ラーメンをお腹いっぱい食べて、「飽く!」と言っている人がいたとして、「満足した」と言っているのか、「うんざりした」と言っているのか、わかんないわけだからな。

根本的には「十分だ!」と言っているんですよね。

その「十分な状態」を、肯定的にとらえているのか、否定的にとらえているのか、態度などから判断する必要があります。

ニコニコしていたら「満ち足りた!」で、うんざりしていたら「飽きた・・・」ということになりますね。

態度から判断って・・・ムリゲーじゃない?

現実的には、設問として問われている場合には、前後の文脈にヒントがありますので、なんとかしてそれを探し出すことですね。

前後関係からわからないような場合に、そこを設問にすることはありません。

おお・・・それならよかった。

「設問」のことでいえば、「飽かず」とか「飽かぬ(体言)」というかたちで、打消の助動詞「ず」と連語のような状態で問われることが多いですね。

「満足する・満ち足りる」を打ち消して、「満足しない・満ち足りない」と訳すか、「飽きる・うんざりする(いやになる)」を打ち消して、「飽きない・いやにならない」と訳すか、やはり文脈判断が重要になります。

問われていたとしたら、傍線部だけじゃ訳せないから、前後を見なきゃいけないってことだな。

例文

あはれ、いかで芋粥にあかん。(宇治拾遺物語)

(訳)ああ、何とかして芋粥に満足しよう。【芋粥を腹いっぱい食べよう】

世の中の憂けくにあきぬ奥山の木の葉に降れる雪や消なまし (古今和歌集)

(訳)世の中のつらさにうんざりした【いやになった】。奥山の木の葉に降り積もった雪が消えるように、私も姿を隠してしまおうか。

魚(いを)は水にあかず。(方丈記)

(訳)魚は水にうんざりしない(いやにならない)。

さばかりおそろしげなる山中にたちてゆくを、人々あかず思ひてみな泣く。(更級日記)

(訳)これほど恐ろしそうな山の中に帰って行くのを、人々は名残惜しく思ってみな泣く。

ここでの「あかず思ふ」は「満ち足りないと思う」ということですが、「相手との関係がまだ十分でないと思う」ということは、言い換えると、「名残惜しい」ということになります。

選択肢問題の訳では、「飽かず思ふ」「飽かぬ思ひ」といった表現を、このように、「名残惜しく思う」と訳すことが多いです。