ながむ【眺む・詠む】 動詞(マ行下二段活用)

ぼーっと・・・

意味

眺む

(1)(長い間)ぼんやり見る

(2)もの思いにふける

(3)見渡す *中世以降

(1)+(2)で、「もの思いにふけりながらぼんやり見る」と訳すこともあります。

詠む

(1)(詩歌・和歌を)口ずさむ・詠む・つくる

(2)(声を長くひいて)吟ずる

ポイント

「長目」あるいは「長見る」といったことばが、動詞化したのではないかと言われています。

文字通り「長時間ものを見る」ということは、シャカリキに動いているわけではありませんから、「もの思いにふけりながらぼんやりしている」という意味で用いられるようになっていきました。

「歌を口ずさむ」なんていう意味にもなるんだな。

ながむ」と「ながむ」は、結果的には別の動詞として扱われますが、同根のことばだと考えられます。

「長時間何かを眺めている」ということは、それこそ「詩歌の構成やことば」を考えこんで対象を見ている場合がありますね。そう考えると、「ながむ」から「ながむ」が派生していったといえます。

あるいは、「詩歌を口ずさむ」ことは、声を長くつかって、朗々と歌いあげるわけですから、いわば「声をむ」ことになります。そう考えると、もともとの「長」という意味から、「ながむ」と「ながむ」が別々に成り立っていったとも言えます。

こりゃあ、ひらがなで書かれるとどっちかわかんないな。

こればっかりは文脈判断ですね……。

例文

暮れがたき夏の日暮らしながむればそのこととなくものぞ悲しき(伊勢物語)

(訳)なかなか日が暮れない夏の一日を(もの思いにふけりながら)ぼんやり見ていると、なんということもなく、もの悲しいものだ。

かの在原のなにがしの、「唐衣着つつなれにし」とながめけん三河の国八橋にもなりぬれば、(平家物語)

(訳)あの在原の某が、「唐衣着つつなれにし」と(歌を)詠んだとかいう三河の国八橋にさしかかると、

平重衡が捕まり、梶原景時に護衛されながら、鎌倉に連れてこられる道中のことです。

三河の国に入ると、「ああ、在原業平が歌を詠んだところだなあ」と思ったのですね。

教養があるんだな。

「唐衣着つつなれにし」の歌については、こちらをどうぞ。