をし【惜し・愛し】 形容詞(シク活用)

そのままでいてほしいのに・・・

意味

(1)残念だ・心残りだ・惜しい

(2)いとしい・かわいい

ポイント

動詞「をしむ」と同根の語です。

変化していくものに対して、「残念だ」と思う気持ちを示しています。

「変わってほしくない」と思っているということは、現状に愛着があり、そのままでいてほしいと思う気持ちと表裏一体なので、「いとしい」「かわいい」と訳すこともあります。

動詞のほうは、「過ぎ行く春を惜しむ」とか、今でも使うもんね。

そうですね。

「をし」の背景にある「変化」は、たいてい「なくなっていくこと」なので、一言でいうと「喪失感」を意味することが多いです。

類義語に「惜し(あたらし)」がありまして、こちらも「惜しい」と訳します。ただし、「あたらし」のほうは、「真価が発揮されていないこと」「本来の実力通りに評価されていないこと」などに対する「もったいない」という気持ちです。

これ、漢字で書かれるとどっちかわかんないね。

ただ、訳語自体は「をし」も「あたらし」も「惜しい」でOKなので、漢字で書いてあったら、むしろボーナス問題ですよ。

言われてみればそうだな。

ほかにも「くちをし」という類義語もあります。

「をし」はもともと「変化」に対する「そのままでいてほしい」と思う気持ちなのですが、「くちをし」になると、「ダメになったもの」に対して「がっかりだなあ」と思っているケースに使用されやすいです。「期待はずれで残念だ」という意味合いですね。

例文

この花の散るををしうおぼえさせたまふか。(宇治拾遺物語)

(訳)この(桜の)花が散るのを残念だとお思いになるのか。

飽かず、をしと思はば、千年を過ぐすとも、一夜の夢の心地こそせめ。(徒然草)

(訳)(人生に)満足せず、心残りだと思うならば、千年を過ごしても、一夜の夢のような気持ちがするだろう。