半端な状態
意味
(1)中途半端だ・どっちつかずだ (物体や現象自体の様子)
(2)不似合いだ・不釣り合いだ (関係・組み合わせ)
(3)きまりが悪い・ぶざまだ (居心地・状況)
(4)そっけない・不愛想だ (対応・受け答え)
(5)激しい・ひどい (自然現象)
ポイント
「はしたなり」という形容動詞がありまして、その語幹「はした」に、「実に~な状態である」「~であることははなはだしい」という意味を持つ接尾語「なし」がついて形容詞化したと言われています。
「なし」なのに、「無し」じゃないパターンのやつか。
そうです。
「なし」というひらがなが付いていますが、「無し」ではないので注意してください。
「はした」は、「名詞」ではなくて、「状態・性質」だと考えるんだな。
そういえば、「はした金」なんて言うよね。
そうですね。
「中途半端な金額」といった意味になります。
この場合、「はした」は、「お金」の「状態・性質」を示していることになります。
「はしたなし」という語は、接尾語「なし」によって、「はした」という「状態・性質」がいっそう顕著に見られるような様子を意味していると言えますね。
ほうほう。
さて、「端」は、「ど真ん中のポジションではない」ということですね。「主流ではない」ということです。そのことから、「中途半端だ・どっちつかずだ」などと訳します。
たとえば、「カタログの端っこのほうに小さく載っている商品」のイメージですね。
また、たとえば「知り合いがいないパーティー」で、部屋の片隅でバツが悪そうに縮こまっているイメージだとも言えます。そのことから、「きまりが悪い・ぶざまだ」などと訳します。
「はじっこのほうで半端だなあ」「すみっこで居心地悪い」てことなんだな。
「何か」と「何か」の「関係」や「組み合わせ」について「はしたなし」と言う場合には、その「関係」や「組み合わせ」が「主流(王道)から外れている」ということになります。「半端な組み合わせ」ということですね。
そういう場合は、「不似合いだ・不釣り合いだ」と訳します。
「ガリガリくん」の「コーンポタージュ味」は、はしたなしと思ひけれど、食ひてみればうまし。
みたいな感じだな。
例文
はしたなきもの。異人を呼ぶに我ぞとてさし出でたる。(枕草子)
(訳)きまりが悪いもの。違う人を呼んでいるのに、自分かと思って出ていった(とき)。
思ほえず、古里にいとはしたなくてありければ、心地惑ひにけり。(伊勢物語)
(訳)思いがけず、(さびれた)旧都にたいそう不似合いな様子で(美しい姉妹が)住んでいたので、(男は)戸惑ってしまった。
「A」と「B」の「関係」について「はしたなし」という場合、「こうあるべき」という「主流(王道)の組み合わせ」とは外れているという意味合いで、「不似合いだ・不釣り合いだ」などと訳します。
はしたなくも、なさし放ちたまひそ。(源氏物語)
(訳)そっけなくも【不愛想に】、放っておいたりはなさらないでください。
「はしたなし」が、「居心地の悪さ」を表し、「きまりが悪い」という意味になることは上で見たとおりですが、「相手がそのような思いを抱いてしまうような態度」ということから、「そっけない・不愛想だ」と訳すことがあります。
本質的には、「きまりが悪いと思わせてしまうような(態度)」という意味ですが、コンパクトに訳せば、「そっけない(態度)」「不愛想な(態度)」となります。
雨風はしたなくて、帰るには及ばで、山の中に心にもあらず泊まりぬ。(宇治拾遺物語)
(訳)雨風が激しくて、帰ることができず、山中にやむをえず泊まった。
「通常とは違う極端さ」ということで、「激しい」「ひどい」などと訳すことがあります。
ここでは「雨風」が極端だということですね。