「る」「れ」というひらがなについて、まぎらわしいのは次の2つです。
「る」の識別
(1)「自発・受身・可能・尊敬」の助動詞「る」の終止形
「四段」「ナ変」「ラ変」の「未然形」についている「る」は、「自発・受身・可能・尊敬」の助動詞「る」の終止形です。
「四段」「ナ変」「ラ変」の未然形ってすいぶん限定的だね。
「自発・受身・可能・尊敬」の助動詞には「る」と「らる」がありますが、「る」は「ア段」の音にしかつきません。
未然形が「ア段」の音になるのが「四段」「ナ変」「ラ変」なのですね。
「らる」のほうは、未然形が「ア段以外」の語につきます。
(2)「存続・完了」の助動詞「り」の連体形
「サ変の未然形」「四段活用の已然形(命令形)」についている「る」は、「存続・完了」の助動詞「り」の連体形です。
これまたずいぶん限定的だね。
音でいえば、「エ段」の音にしかつきません。
もともと、「咲きあり」とか「具しあり」というように「連用形+あり」だったものが、つまって「咲けり」「具せり」となっていったものです。
その構造上、「り」の直前は「エ段」の音になるのですね。
「り」の連体形は「る」で、已然形は「れ」です。このとき、「自発・受身・可能・尊敬」の「る」との区別に注意しましょう。
「れ」の識別
上でみた「自発・受身・可能・尊敬」の助動詞「る」は、「未然形」「連用形」が「れ」になります。
「存続・完了」の助動詞「り」は、「已然形」「命令形」が「れ」になります。
そのため、活用語に続く「れ」というひらがなに出会ったら、そのときも上でみた識別が必要になります。
(1)「自発・受身・可能・尊敬」の助動詞「る」の「未然形・連用形」
「四段・ナ変・ラ変」の「未然形」についている(つまり「ア段」の音についている)「れ」は、「自発・受身・可能・尊敬」の助動詞「る」の「未然形」または「連用形です。
(2)「存続・完了」の助動詞「り」の「已然形・命令形」
「サ変の未然形/四段の已然形(命令形)」についている(つまり「エ段」の音についている)「れ」は、「存続・完了」の助動詞「り」の「已然形」または「命令形」です。
例文
家の作りやうは、夏をむねとすべし。冬は、いかなる所にも住まる。(徒然草)
(訳)家の作り方は、夏(に過ごしやすいこと)を基本とするのがよい。冬は、どんな所にも住むことができる。
(1)自発・受身・可能・尊敬の助動詞「る」の終止形です。
ここでは「可能」の意味です。
「住む」という動詞の未然形「住ま」についています。
「四段・ナ変・ラ変」の「未然形」についている=「ア段の音」についている「る」は、(1)になります。
人をやりて見するに、おほかた逢へる者なし。(徒然草)
(訳)人をつかわして(鬼を)見させるが、まったく出会った者はいない。
(2)「存続・完了」の助動詞「り」の連体形です。
「逢ふ」という動詞の已然形「逢へ」についています。
「サ変の未然形/四段の已然形(命令形)」についている=「エ段の音」についている「る」は、「存続・完了」の助動詞です。
涙のこぼるるに、目も見えず、物も言はれず。(伊勢物語)
(訳)涙があふれ出て、目も見えず、物も言うこともできない。
(1)自発・受身・可能・尊敬の助動詞「る」の未然形です。
ここでは「可能」の意味です。
「言ふ」という動詞の未然形「言は」についています。
「四段・ナ変・ラ変」の「未然形」についている=「ア段の音」についている「れ」は、「自発・受身・可能・尊敬」の助動詞です。
心、身の苦しみを知れれば、苦しむ時は休めつ、まめなれば使ふ。(方丈記)
(訳)心は、体の苦しみをわかっているので、苦しいときは休ませて、健康であるときは使う。
(2)「存続・完了」の助動詞「り」の已然形です。
「知る」という動詞の已然形(命令形)「知れ」についています。
「サ変の未然形/四段の已然形(命令形)」についている=「エ段の音」についている「れ」は、「存続・完了」の助動詞です。