あやし【怪し・奇し・賤し】 形容詞(シク活用)

えぇっ!?

意味

怪し・奇し

(1)不思議だ・神秘的だ

(2)変だ・妙だ・おかしい

(3)異常だ・めずらしい

(4)不都合だ・不安だ

賤し

(1)身分が低い・卑しい

(2)みすぼらしい・みっともない・見苦しい

ポイント

感動詞「あや」が、そのまま形容詞になったと考えられています。

「あや~」と不思議に思うほど、自分の理解を超えた現象などに用います。

多くは、「不思議だ」という意味で使用しますが、「身分が低い」という意味でも使用します。

現代の話し言葉でいうと、「ええっ? マジで??」という感じなのかな。

でも、どうしてそれが「身分が低い」って意味になるんだ?

当時の文章に残っているようなことばというものは、基本的に「貴族の言語」なんですよね。

「貴族」からしてみると、農民などの生活は、「不思議」「変」だと思うようなものもたくさんあります。

つまり、「身分が高い者」から見ると、「身分が低い者」の言語や文化は「不思議」で「変」なので、「あやし」は、やがて「身分が低い」という意味でも使用されるようになっていきました。

さらに、「みすぼらしい」などの意味でも使用されるようになっていきます。

貴族ってけっこうひどいんだな。

例文

女御、例ならずあやしとおぼしけるに、(枕草子)

(訳)女御は、いつもとは違い、様子が変だ【おかしい】とお思いになったところ。

情けある人にて、瓶に花を差せり。その花の中に、あやしき藤の花ありけり。(伊勢物語)

(訳)情趣を理解する人で、瓶に花を差した。その花の中に、珍しい藤の花があった。

心にうつりゆくよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそ、ものぐるほしけれ。(徒然草)

(訳)心に浮かんでは消えてゆくたわいもないことを、とりとめもなく書きつけていると、異常なほど、狂おしい気持ちになるものだ。

あやしの身には得がたき物にて、(発心集)

(訳)身分が低い者の身には、手にいれにくい物で、

鬼の生みたりければ、親に似てこれも恐ろしき心あらむとて、親の、あやしき衣ひき着せて、(枕草子)

(訳)(みのむしは)鬼が生んだので、親に似てこの子にも恐ろしい心があるだろうと、親が、みすぼらしい着物を着せて、