すなはち、また返ししておこせ給へり。(枕草子)

〈問〉次の傍線部を現代語訳せよ。

いと心もとなくおぼゆれど、「なほ、いとおそろしういひたる物忌みしはてむ」とて、念じくらして、またつとめて、藤大納言の御もとに、この返しをして、さし置かせたれば、すなはち、また返ししておこせ給へり

現代語訳

とてもじれったく【気がかりに】思われるが、「やはり、とても恐ろしいと言っている物忌みを最後までしよう」と思って、我慢して過ごして、また翌朝、藤大納言の御もとに、この(歌に対する)返事【返歌】をして、置いておかせたところ、(相手は)すぐに、また返事【返歌】をして送ってきなさった

前後のお話はこちら。

ポイント

すなはち 副詞

「すなはち」は、副詞です。空間的、時間的に連続している状態を意味します。

時間的な意味で使用していれば「すぐに」と訳します。

空間的な意味で使用していれば「そのまま」と訳します。

ここでは、文脈上「時間的な意味」で使用されていますので、「すぐに」と訳しましょう。

おこす 動詞(サ行下二段活用)

「おこせ」は、動詞「おこす」の連用形です。

「おこす」「遣す」と書きます。

同じ漢字を使用する動詞に「遣る(やる)」があります。

意味はどちらも「送る」というものなのですが、「やる」の場合は「こちらから向こうに送る」ということで、「おこす」の場合は「向こうからこちらに送ってくる」ということになります。

この場面では、向こう(藤大納言?)から、こちら(藤三位)に返事を送ってきたことになります。

給ふ 動詞(サ行四段活用)

「給へ」は、敬語動詞「たまふ」の已然形です。

ここでは、尊敬語補助動詞です。「お~になる」「~なさる」と訳しましょう。

り 助動詞

「り」は、助動詞「り」の終止形です。意味は「存続・完了」です。