心にくくなりて、(徒然草)

〈問〉次の古文を現代語訳せよ。

心にくくなりて、

徒然草

心にくく/なり/て、

〈形容詞〉こころにくし

「心にくく」は、形容詞「心にくし」です。

直後に動詞「なる」があるので、連用形になっています。

意味は、「奥ゆかしい」「心惹かれる」です。

中世以降は、「恐ろしい」という意味でも用いられるようになりましたが、古文の試験で問われるのは圧倒的に中古の用法です。

〈+α〉「憎し」と「易し」

「憎し」という語の反意語は、「易し(やすし)」です。

つまり、「憎し」は「簡単ではない」というニュアンスをそもそも持っているのです。現在でも、たとえば「作業しにくい」などと使用します。

これは、「対象への理解や納得が、簡単には心の中を通過していかない」ということであり、「なんか引っかかるなあ」ということを意味しています。つまり、「対象にとらわれている心の状態」を「憎し」といいます。

その「腑に落ちない」心の状態を、「しゃくに障る」「気に食わない」などと訳したりしますが、あくまでも「納得できない」という程度のものであり、「憎悪」の意味はありません。羨望や、うらやみのニュアンスです。

そのことから、「こちらがしゃくに障るほど相手が興味深い」という意味で、「感心だ」「あっぱれだ」と訳すこともあります。現在でも、「よ! にくいね!」などという場合は、相手をほめている使用法です。

さて、それに「心」がつき、「心憎し」となると、そのように相手を立てる意味での用法が圧倒的に多くなります。

代表的な訳は「奥ゆかしい」です。「奥ゆかしい」とは、相手の「奥」を「知りたい」と思うということです。「あいつは、ほんと、にくいやつだよ! あいつのことをもっと知りたいよ!」というイメージです。

〈動詞〉なる

「なり」は、ラ行四段活用動詞「なる」です。

直後に「て」があるので、連用形になっています。

意味は現代語と同じなので、そのまま「なる」と書きましょう。

解答例

奥ゆかしくなって、
【心引かれる態度になって、】